2021年11月15日号
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artscapeレビュー

2013年04月15日号のレビュー/プレビュー

坂茂 建築の考え方と作り方

会期:2013/03/02~2013/05/12

水戸芸術館 現代美術ギャラリー[茨城県]

水戸芸術館の坂茂展を見る。いつもとは動線の順番をひっくり返し、空間を体感できる1/1やジョイントのモックアップを多数展示する、画期的な内容だった。むろん、災害後に緊急につくる仮設建築だからこそ、急いで準備しないといけない展覧会でも設営可能だったのだろう。そして芸術的な模型やドローイング、あるいは抽象的なコンセプトを見せるのではなく、リアルなモノを通じて構造、素材、空間を具体的に考えさせることを強く意識した建築展である。おそらく通常の展示予算では全然足りないだろうから、多くの協賛など外部資金も持ち込んだのだろう。また写真撮影もご自由に、というのが嬉しい。

2013/03/08(金)(五十嵐太郎)

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二年後。自然と芸術、そしてレクイエム

会期:2013/02/05~2013/03/20

茨城県近代美術館[茨城県]

茨城県近代美術館の「二年後。自然と芸術、そしてレクイエム」の展覧会はとてもよかった。3.11の影響を受けた作品よりも、阪神・淡路大震災と3.11の両方を経験した絵や、その日偶然、被災を逃れた絵など、むしろ否応なく震災と関係を持ってしまった作品の数奇な運命などにも焦点を置く視点が興味深い。また美術館のアートフォーラムでは、「3.11 ユニセフ 東日本大震災報告写真展」を開催し、いわゆる報道写真が切り取った被災地のその瞬間やその後の経過などを紹介する。いろいろ訪れた結果、背後に街の風景の一部が見えるだけで、キャプションを読まなくても、どこの街が大体わかるようになっていた。

2013/03/08(金)(五十嵐太郎)

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せんだいデザインリーグ2013 卒業設計日本一決定戦

会期:2013/03/09~2013/03/10

せんだいメディアテーク、東北大学百周年記念会館川内萩ホール[宮城県]

SDL2013、すなわち卒業設計日本一決定戦に審査員として参加した。実はファイナリストを決める際、爆弾にできると判断した作品をひとつ入れようとしたのだが、それがかなわず、困ったことになったなあと思っていた。強く推すのと、強く批判されるような案がないと議論が盛り上がらないからである。経験的にまあまあイイ作品ばかりだと面白くない。さて、ファイナリストに残った10名中7名に投票していたのだが、審査の過程で投票していなかった高砂充希子の「工業と童話」を推すことにした。彼女のプレゼンテーションに対し、童話が中途半端と批判したら、堰を切ったように語り始めたからである。また同じく審査員だった内藤廣さんによると、彼女が東京でプレゼしたときは完全にパブリンとファクタローのキャラを封印していたらしい。そもそも、こうしたイベントでは、デザインが優れているだけでは、入れないことにしている(それは建築家や大学の先生に褒めてもらえばいい)。なぜ投票するのかの理論を発見できるような案を推したい。妄想的な寓話を構築する一方、建築の言語でもきちんと説明可能な二重性を、ここまで成し遂げた学生を初めて目撃した。だから、票を入れた。京都大学の渡辺育は光と音のダンテウムと言うべき圧倒的な案だと思っていたので、何度も彼が説明を付加できるように質問したが、結局、自分にとっての「発見」がなかったので最後は票を外した。残り2つで推した田中良典のお遍路巡り建築と、柳田里穂子の遺言の家は、よくわかる案だっただけに、個人的には逆に伸びしろがなかった。遺言の家が初遭遇なら、もっと推したと思う。しかし、アンフェアかもしれないが(数回SDLの審査を担当したために、過去の大会の履歴を踏まえているという点)、2008年の斧澤未知子「私、私の家、教会、または牢獄」を超えていなかったと思う。あのとき私性建築の最終兵器と論じたが、やはり超えるものはない。

2013/03/10(金)(五十嵐太郎)

第16回岡本太郎現代芸術賞展

会期:2013/02/09~2013/04/07

川崎市岡本太郎美術館[神奈川県]

今年は739点の応募のうち22組が入選。岡本太郎賞は、茶室の壁から柱、畳、釜、茶碗、花入れ、掛軸にいたるまですべて鉄素材・鉄製品を利用してつくった加藤智大の《鉄茶室徹亭》。これはスゴイ。秀吉の「黄金の茶室」より地味だが、きっと金を失ったんで鉄になったんだろう。でもそれがどーした感は否めない。岡本敏子賞は、宇宙からエイリアンが見た地球の姿を絵画、立体などで表現した石山浩達の《エイリアン・ヴィジョン:アンリミテッド・オイル》。これも労作だが、FRPの立体が村上隆のそれに似てたり既視感がつきまとう。特別賞で気になったのは、原寿行《アイ》と小松原智史の《コマノエ》。前者はブタの眼球から取り出したレンズを使って像を映し出す装置で、時間が経つにつれレンズが濁り、像がボケていく過程を見せている。これはおもしろい。ブタの眼球を切り裂く映像はブニュエルの『アンダルシアの犬』を思い出す。さらに鳥とか魚とかイカとか昆虫とかヒトとかさまざまな生物で試してほしい。後者の小松原は会期中、壁3面に貼ったパネルのみならず壁面にも墨でドローイングを増殖させている。その絵柄はボッシュ+山下菊二+ガロのマンガみたいなドロドロのアナクロものだが、時と場所をわきまえずに描き続ける意欲を買いたい。勝手に村田真賞だ。ところで今回、絵画作品が何点かあったが、サイズが巨大なせいかひとつの画像を三つのパネルに連続して描く3連画が多かった。先に挙げた石山の絵画部分がそうだし、ほかに熊野海、宮崎勇次郎、村上幸織、赤川芳之もそう。絵画を出してる大半が3連画だ。なぜ2でも4でもなく3なのか。

2013/03/12(火)(村田真)

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第6回 JIA東北住宅大賞2012 第2次審査(現地審査)

会期:2013/03/12~2013/03/14

[青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県]

毎年恒例のJIA東北住宅大賞の現地審査で、古谷誠章さんと3日間の強行軍だった。今回は8作品で、初めて東北六県すべてを一気にまわることになった。特に2日目は、岩手─青森─秋田─宮城─福島を一日で移動するスケジュール。改めて東北の広さを感じる。青森、秋田、山形では、豪雪の風景も見ながら、東北らしさが強く表われる住宅を見学し、卒計審査と頭を切り替え、施主や建築家の思いをうかがう。随所に東日本大震災の影響も感じる。災害後の活動についても、現地にいる建築家だからこその苦労とリアリティをいろいろと聞くことになった。残念ながら、メディアであまり伝わっていないが。さて、今回の東北住宅大賞は、蟻塚学による弘前の《冬日の家》である。東西に思い切り細長いヴォリュームをとって、完成度の高い可変性のある空間を実現した。続いて優秀賞は、3つ選ばれた。北海道の灘本幸子さんが設計した《北上の家》は、断熱性の高い分厚い白い壁で、光を均質に散らし、内部に西欧の街のような空間を生み出す。齋藤史博による《かわまた「結の家」》は、周辺の環境を生かしたシンプルな構成ながら、施主がさらに住空間を個性的に成長させていることに驚かされた。仙台市岩切の手島浩之の《森を奔る回廊》は、雑木林を避けつつ、T字のヴォリュームを巧みに配置し、自然を感じる家だった。そして以下が奨励賞である。SOYsourceによる《M先生の家》は、横に長くひきのばした家型が印象的だった。松本純一郎の《スリーコートハウス》は、ここぞという見せ場を用意した彫刻的な建築である。納谷兄弟の《新屋の住宅》は、雪が滑降する屋根のヴォリューム操作が巧い。渋谷達郎の《白鷹の家》は、眺望を確保しつつ、白いライトボックスを上にのせた興味深い構成だった。

写真:左、上から、蟻塚学《冬日の家》、齋藤史博《かわまた「結」の家》、SOY source《M先生の家》、納谷兄弟《新屋の家》、右、上から、灘本幸子《北上の家》、手島浩之《森を奔る回廊》、松本純一郎《スリーコートハウス》、渋谷達郎《白鷹の家》

2013/03/12(火)~14(木)(五十嵐太郎)

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