2021年11月15日号
次回12月1日更新予定

artscapeレビュー

2013年04月15日号のレビュー/プレビュー

瀬戸内国際芸術祭2013 春(犬島)

会期:2013/03/020~2013/04/021

瀬戸内海の12の島+高松・宇野[香川県]

雨が止み、快晴に向かったのも嬉しかった瀬戸内国際芸術祭の島巡りツアー2日目。朝8時30分発の船で直島から犬島へ渡った。乗船時間は約1時間。やや駆け足気味だったが、到着してから五つの「家プロジェクト」作品を鑑賞した。透明アクリルの円形の構造物に張り合わせた造花の花びらを展示した《A邸/リフレクトゥ》、壁面に大小さまざまな円形レンズを取り付けた《S邸/コンタクトレンズ》、民家をリノベーションした建物で制作された名和晃平の大作《F邸/Biota (Fauna/Flora)》と見てまわる。前田征紀によるI邸のサウンドインスタレーションは外に広がるのどかな景色、光と水の揺らめきが美しく、できれば静かにゆっくりと堪能したい作品であった。インドネシア出身のアーティスト、フィオナ・タンによる犬島の石切り場と瀬戸内の海を背景にした映像インスタレーション《Cloud Island I》も面白い。犬島には、道端のところどころにSANAA設計の《ラビットチェア》が設置されているのだが、案内してくださった方によると、もともと《中の谷東屋》に置かれたこの椅子は、通りかかるたびに移動しているとのこと。地元の人たちにも親しまれる場となっていることがうかがえる微笑ましいエピソードでそんな場面を想像するのも楽しかった。

2013/03/21(木)(酒井千穂)

瀬戸内国際芸術祭2013 春(女木島)

会期:2013/03/020~2013/04/021

瀬戸内海の12の島+高松・宇野[香川県]

犬島から女木島に渡る。乗船時間は1時間弱。到着した女木港からの穏やかな海の眺めがまず素晴らしい。堤防沿いにずらりと並ぶ木村崇人の風見鶏《カモメの駐車場》の近くで昼食をとり、現在休校中の女木小学校に移動。この中庭に、女木島の展示のメインでもある大竹伸朗の《女根/めこん》が設置されている。島に自生するヤシとブイを合体させたその異様なヴィジュアルや雰囲気に目を奪われてしまうが、よく見ると作品の周囲に生えている木やさまざまな草花もエネルギッシュでたくましいあり様。また違う季節にも見てみたい小さな植物園のようなスペースだった。愛知県立芸術大学が活動拠点する「MEGI HOUSE」ではピアノコンサートも催されていた。私は聴けなかったが、午後からは快晴のうえ、ぽかぽか陽気だったのできっといっそう贅沢なひとときになっただろう。女木島ではほかに、図書室とレストランを併設した建物に展示されたアルゼンチン生まれのレアンドロ・エルリッヒの作品、陶のブロックを積み上げて設置された杉浦康益の《段々の風》なども見てまわった。ちなみに個人的な話だが、女木島では港からも近い郵便局を訪ね、ただ一人の局員さんに女木島局の風景印を押印してもらって少し会話を交わした。芸術祭は開催地のほとんどが離島というだけに、限られた滞在時間では、展示作品を見てまわることばかりに夢中になってしまいそうだが、せっかくなのでアートとともにその土地の魅力にもできるだけ触れたいものだ。それが地元の人との出会いも楽しめる機会になったらなお素敵だ。私も、束の間の時間だったが持ち帰った女木島郵便局の風景印を見る度に、親切に接して下さったその局員さんを思い出す。忘れ難い良い思い出。


木村崇人《カモメの駐車場》

2013/03/21(木)(酒井千穂)

瀬戸内国際芸術祭2013 春(沙弥島)

会期:2013/03/020~2013/04/021

瀬戸内海の12の島+高松・宇野[香川県]

女木島を後にして高松港へ。そこからバスで今回の島巡りツアーの最終目的地、坂出市にある沙弥島へ移動した。沙弥島は現在は埋め立てられて地続きになっているが、柿本人麻呂が詠んだ「万葉の島」としても知られる有名な島。神戸芸術工科大学の教授らによる、讃岐三白(かつて讃岐の三大産物とされた砂糖、綿、塩)の「白」をテーマにした作品が展示されている旧沙弥小中学校、藤本修三の《八人九脚》の設置された場所からは瀬戸大橋も一望できる。五十嵐靖晃の《そらあみ》は沙弥、瀬居、与島、岩黒、櫃石の5島の漁師の人々と協力して紡いだという大きな漁網。使われた赤、白、黄、黒、青の色が見る角度や光によっても見え方が異なり、さまざまな表情が楽しめる。その様子や網の向こう側に見える瀬戸内海も美しいのだが、近づいて見ると編み方にも個性がうかがえて微笑ましい。《そらあみ》のすぐ近くでは「EAT&ART TARO」による地元の食材を使った「島スープ」が提供されている。千年も前から沙弥島の人たちに食されてきたというカメノテという貝の入った《千年スープ》はぜひ味わってみてほしい一品だ。春期はまもなく終了するが、島の歴史文化や人々の生活に思いの巡る作品で彩られた沙弥島は、陸続きなので他の島よりも気軽に足を運ぶことができそう。


藤本修三《八人九脚》と瀬戸大橋の風景


五十嵐靖晃《そらあみ》

2013/03/21(木)(酒井千穂)

VOCA 2013:現代美術の展望──新しい平面の作家たち

会期:2013/03/15~2013/03/30

上野の森美術館[東京都]

VOCA展も今年20回目を迎えた。そのため同館ギャラリーと第一生命ギャラリーでは20年間のVOCA賞作品を展示し、あわせて記録集も出している。その受賞作品を通覧すると、この20年間で着実に「VOCA的」と呼んでもいいようなスタイルが形成されてきたことがわかる。具体的にいえば、抽象画でもリアリズム画でもなく、華やかな色彩で筆触を強調した具象イメージのパッチワーク、といったところだ。これはしかしVOCAに限らずいまどきの絵画全般の傾向だが、VOCAがその傾向を先導し、また拍車をかけていることは間違いない。受賞作品の傾向が毎回コロコロ変わるのも困りものだが、これほど「VOCA色」が鮮明化してくるとみずから首を絞めることになりはしないか。その立役者というか元凶ともいえるのは20年間ほぼ固定席と化した4人の選考委員だろう。別に彼らが悪いわけではないけれど、20年を節目にメンバー全員入れ替えたらまた新鮮な平面作品に出会えるはず。毎回カタログに掲載される「選考所感」もマンネリ気味だし。さて本展。今年VOCA賞を獲得した鈴木紗也香の作品は、先に述べた「VOCA的」絵画の典型といえる。が、それだけでなく、「内と外」をテーマに窓や室内や画中画などを描いているせいか、画面空間が複雑な重構造になっていて目を喜ばせてくれるのだ。奨励賞や佳作賞は、柴田麻衣、平子雄一、大崎のぶゆき、吉田晋之介、佐藤翠の5人で、映像の大崎を除き、いずれも筆触を強調した半具象絵画という点でVOCA的だ。それはいいとして、気になるのは彼ら全員が複数のキャンバスやパネルにひとつの画面を切れ目なく描いていること。描かれた画像に切れ目はなくても物理的に合わせ目(垂直線)が見えてしまい、それが気になるのだ。画面が巨大だから複数のキャンバスを使うのはわかるが、それなら線を消すか、逆に線を画像に組み込むかするべきだ。またこれとは別に、加茂昂や小谷野夏木ら、異なるイメージを描いた複数のキャンバスを組み合わせて1点の作品として見せる試みも目についた。

2013/03/21(木)(村田真)

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鈴木紗也香 展

会期:2013/03/18~2013/03/23

ギャラリーQ[東京都]

さっき「VOCA展」で見て来たばかりだが、こちらは銀座のギャラリーなので中小品が中心。窓と室内を描いてるせいか、大作はタブローより壁画のほうが似合いそうな気がする。彼女は今年初め名古屋でおこなわれた「アーツチャレンジ2013」では、通路の壁に壁紙を貼ってその上に絵を飾っていたけど、フラットな色面をベースに窓や室内を描いてる絵だから、より壁面を意識して見せたほうが効果的だと思う。小品には和装の女性を描いたものもあった。なんじゃこりゃ? 新たな展開に向けての習作だろうか。

2013/03/21(木)(村田真)

2013年04月15日号の
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