artscapeレビュー

2015年08月15日号のレビュー/プレビュー

《原爆─ひろしまの図》公開修復

会期:2015/07/18~2015/09/27

広島市現代美術館[広島県]

戦後70年ということで、広島現美のミュージアムスタジオでは、《原爆─ひろしまの図》公開修復を行ない、床置きされた大きな絵を台の上から眺める仕かけもあった。丸木位里・俊夫妻が描いたシリーズであり、剥落などの傷みが進んだことから、普段は可視化されない美術館の保存事業を見せる企画だった。

2015/07/26(日)(五十嵐太郎)

コレクション展 2015-II「われらの狂気を生き延びる道を教えよ」

会期:2015/07/25~2015/10/18

広島市現代美術館[広島県]

広島現美の常設コレクションでは、「われらの狂気を生き延びる道を教えよ」展を開催していた。展示されたアルフレッド・ジャーの作品名からとったタイトルだが、さらにもとをたどれば、大江健三郎の書名に基づく。さまざまな角度から広島/核/原爆と、現代美術の関係を検証する。若林奮の巨大彫刻《DOME》がなかなかの迫力だ。またイヴ・クラインの人拓は、原爆による人影の痕跡の影響を受けたらしい。

2015/07/26(日)(五十嵐太郎)

グレート・ザ・歌舞伎町写真展

会期:2015/07/25~2015/08/12

Bギャラリー/トーキョーカルチャートby ビームス[東京都]

何年か前から、「グレート・ザ・歌舞伎町」という真面目なのかふざけているのかよくわからない名前を、雑誌等で見かけるようになった。クリアーな切り口の、面白い写真が多いので気になっていたのだが、今回の展覧会でようやく彼が何者なのか、その全貌が見えてきた気がした。新宿・Bギャラリーでは、200点余りのプリントが壁にびっしり並び、原宿・トーキョーカルチャートby ビームスでは、大判プリントを中心の展示だった。それとともに、バイブルっぽい装丁の全432ページの写真集『グレート・ザ・歌舞伎町写真集』(デザイン・町口景)も刊行されている。
見ながら感嘆したのは、被写体をキャッチするアンテナの幅の広さと感度のよさ、そして抜群の行動力と編集能力だ。皇居の一般参賀、全身入れ墨の男女の集会、ネバダ州のイベント「バーニングマン」、ダライ・ラマ法王、反原発デモ、富士山、靖国神社、原発事故現場、北朝鮮のマスゲーム等々、次々に目の前で繰り広げられる場面を見ていると、現代社会のパノラマをめざましい速度で見せられている気分になってくる。「ワシが面白いと思った場所に行って、会いたいと思った人に会って、撮る」というストレートな思いが貫かれていて、「見たい」、「見せたい」という欲求が、空転することなく撮るエネルギーに転化しているのだ。
見ていて思い出したのは、篠山紀信の『晴れた日』(平凡社、1975年)である。篠山が1974年5月~10月に『アサヒグラフ』に連載したシリーズをまとめたこの写真集と同様に、「グレート・ザ・歌舞伎町」の作品からも、時代を見尽くしてやろうという疾走感が気持ちよく伝わってくる。雑誌メディアの勢いがなくなっているにもかかわらず、あえてプライヴェート・フォト・ジャーナリズムの原点回帰という難しい仕事にチャレンジしている心意気にワクワクさせられた。

2015/07/27(月)(飯沢耕太郎)

《世界平和記念聖堂》

[広島県]

竣工:1954年

久しぶりに村野藤吾の《世界平和記念聖堂》へ。戦後最初の話題のコンペをやったものの、結局、審査員長の村野藤吾が設計してしまったもので、その経緯は問題あるが、完成したものはいい。60年を過ぎて、さらに凄みを増す建築だ。世界各地で見学した近代以降の教会と比べても、決して遜色がない。あえて難を言えば、祭壇の壁画が微妙かもしれない。

2015/07/27(月)(五十嵐太郎)

呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)

[広島県]

呉の大和ミュージアムへ。大勢の来場者で賑わい、改めて日本における大和の人気を痛感する。やはり、吹抜けに設置された1/10スケールの戦艦大和が最大の見世物であり、下や横、あるいは上からと、さまざまな視点から船体を楽しめる。展示は、近代の造船、大和の設計と最期、戦後のタンカー建設など、資料を通じて、呉の歴史をたどる(ただし、一ノ瀬俊也『戦艦大和講義』のように、「宇宙戦艦ヤマト」など、戦後のサブカルチャー受容は紹介しない)が、なぜ戦争が起きたかという社会背景の説明は薄い。

2015/07/27(月)(五十嵐太郎)

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