artscapeレビュー

2011年01月15日号のレビュー/プレビュー

吉村靖孝「CCハウス」展~建築のクリエイティブ・コモンズ~

会期:2010/11/29~2011/12/17

オリエアートギャラリー[東京都]

「CCハウス」展のCCとは、「クリエイティブ・コモンズ」のこと。これは現代において誰かがやるべきテーマである。確かに建築の著作権は長く認められていなかった。しかし、がちがちに権利を主張するのではなく、ゆるやかに建築の著作権について考えるきっかけをわれわれに与えてくれる好企画である。吉村は、プロトタイプの図面をCCの署名付きで販売し、敷地や条件に合わせた改変も認めていく。壁のトレペ、複数の模型、床に描いた平面など、お金をかけずに、イメージをちゃんと伝えている展示もよかった。

2010/12/16(木)(五十嵐太郎)

GLOBAL ENDS towards the beginning

会期:2010/11/19~2011/02/26

ギャラリー・間[東京都]

ギャラリー間の25周年記念として、「世界」を測定するシブい展覧会が企画された。通常は建築家にお任せの個展だが、今回はめずらしくゲスト・キュレーターが設定され、ケン・タダシ・オオシマが、ポルトガル、オーストラリア、シンガポール、日本、アメリカ、チリ、スペインから7組の建築家を選んでいる。東京からは、石上純也が建設中の住宅模型を出品した。彼をのぞいて、日本では知名度が高いとはいえないが、世界の中心においてグローバリズムにのったアイコン建築を手がけるスターアーキテクトではなく、世界の果てにおいて、独自の設計を試みる建築家たちが一同に介した。ともあれ、筆者が15周年記念の「空間から状況へ」展に関わってから、もう10年である。数少ない建築専門の展示施設であるギャラリー間が、四半世紀も継続したことに敬意を表したい。

2010/12/16(木)(五十嵐太郎)

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幕末の探検家 松浦武四郎と一畳敷 展

会期:2010/12/02~2011/02/19

INAXギャラリー1[東京都]

幕末の探検家、松浦武四郎の活動を紹介する展覧会。正直言って、まったく知らない人物だったが、北海道を歩き、地図を作成し、一種の観光ガイドまで作成するなど、既成の枠組に囚われない仕事ぶりがおもしろい。とくに、晩年の1887年、さまざまな古材を集積して制作した究極の一畳空間は衝撃的だった。三重の伊勢神宮、静岡の三島神社、京都の平等院、宮崎の鵜戸神社、奈良の吉水神社や法隆寺、岐阜の長瀧寺など、極小なのに、多様な部材が共存する。個別の真偽はともかく、各地から部材を寄せ集めたのは事実だろう。その物語性が重要な建築である。おそらく彼の旅の記憶も喚起したのではないか。

2010/12/16(木)(五十嵐太郎)

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辰野登恵子 新作展

会期:2010/11/03~2010/12/26

BLDギャラリー[東京都]

もう30年以上も表舞台に立ちながら、作品が色あせたり消費され尽くしたりしない希有な画家。画面に認められるのは、箱を積み上げたようなパターンだったり、棚が交互に並んでいるような奥行きの感じられる空間だったり、血液を顕微鏡でのぞいたような有機的形態だったりと、一見陳腐な具象的イメージだが、結局それは箱にも棚にも血液にも行きつかず、画面の構成要素のひとつとして絵画に奉仕するばかりだ。それは絵画以上のなにものでもないが、絵画そのものであることをまっとうした絵画である、と同語反復に陥ってしまう絵画である。

2010/12/17(金)(村田真)

橋本倫「CALL & RESPONSE」

会期:2010/12/06~2010/12/18

なびす画廊[東京都]

出口王仁三郎、盛宰皇、老僧山人ら日中韓の画人8人の掛け軸に、自作絵画10点を並べた異色の展示。「氾濫する“アート”や“国際展”への違和感」から「東亜三国に於ける逸伝の画人達を橋本が招来し、彼らとの“Call & Response”を試みる、いわば御霊鎮めの企画展」だそうだ。ちょっとイッてる感じだが、興味はこれらの掛け軸をどこで手に入れたのかということ。出口のほかは名前も知らないけど、ずいぶん高そう……。

2010/12/17(金)(村田真)

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