2020年07月01日号
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artscapeレビュー

2015年02月15日号のレビュー/プレビュー

新印象派──光と色のドラマ

会期:2015/01/24~2015/03/29

東京都美術館[東京都]

新印象派を、色彩理論に基づく点描技法の創始者スーラと、その技法を受け継いだシニャック、リュス、クロス、その他ベルギーの画家たちに限定してしまうとかなり地味な展覧会になる。なので、点描技法を試みたピサロ(1830年生)からドラン(1880年生)まで、いいかえれば印象派からフォーヴィスムまで約半世紀をカバーすれば、モネやマティスらビッグネームも入ってくるってわけだ(なぜかゴッホは外れてるが)。でも、狭義の新印象派だけでもいろいろ発見はある。もともと点描は絵具を画素のようにキャンバス上に置いていく技法だから、描く喜びに欠けるし、手仕事では限界があった。そんな欠点を彼らはいかにして克服していったか、できなかったか。たとえば筆触を大きくしたり、ぼかしたり、装飾性を強めたり、さまざまに試行錯誤した形跡が読み取れるのだ。そのあげく、最後のセクションでは色彩も形態もグズグズになり、やがてフォーヴィスムに回収されていく。新印象派がフォーヴィスムを方向づけたともいえるが、フォーヴィスムが新印象派を解放したともいえるのだ。そのへんの美術史のせめぎ合いがおもしろい。

2015/01/23(金)(村田真)

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3331 千代田芸術祭 スカラシップ受賞者展 vol.5

会期:2015/01/10~2015/01/25

アーツ千代田3331 1Fメインギャラリー[東京都]

都美から都現美に向かう途中、秋葉原に立ち寄る。昨年夏の「千代田芸術祭2014」で受賞し、選抜された16組のアーティストによるグループ展。「展示」「映像」「インタラクション」の3部門に分かれているが、見たのは展示部門の9人の作品。いぬいかずとは具象と抽象の境界を狙ったような絵を描いている。たとえば、経線(南極と北極を結ぶ地表の線)のような円弧を何本も引いてタマネギのように見せたり(タマネギを円弧の組み合わせとして描いてるともいえるが)、直線と色面の組み合わせで街路図みたいなネオ・ジオ絵画にしたり。ボールペンやクレヨンを用いてるのでアウトサイダー風に見える。増田ぴろよは刺繍作品だが、よく見るとどれもペニスをモチーフにしていて、男性へのオブセッションがあるのか。「ペニ手芸部」部長らしい。椋本真理子はダムやプールなど貯水した地形を切り取って持ってきたようなFRP彫刻。水も含めて地形や風景を彫刻化しようという発想がいい。でもこれ、ダムとかプールとかいわれればそう見えるだけで、作品だけ見れば抽象彫刻ともいえる。まあ2、3人でも見てよかったと思える作品があったので、寄った甲斐があるというもの。

2015/01/23(金)(村田真)

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未見の星座〈コンステレーション〉──つながり/発見のプラクティス

会期:2015/01/24~2015/03/22

東京都現代美術館[東京都]

「MOTアニュアル」かと思ったらそうではないらしい。「未見の星座」とは、宇宙に散在する星が見えない線でつながって人や動物のかたちに見えてくるように、自分と他人、こことそこ、過去と未来などの「見えないつながり」について考えようというもの。展示室を迷路のようにパネルで仕切り、大小10数個のモニターやプロジェクターに館内風景を映し出す北川貴好のインスタレーションは、ほかならぬ東京都現代美術館との対話といえるし、天井から垂らしたリボンのカーテンに川(運河)のきらめきを投影したり、銭湯の湯桶の底に荒波を映し出したりする志村信裕の映像インスタレーションは、美術館のある深川地域の再発見とも受け取れる。これらは都現美のためにつくられた、都現美ならではの「地域アート」といえるだろう。一方、切手の作品で知られる太田三郎は、東日本大震災の起こった2011年発行の新聞を1日1枚ずつ葉書に漉いたり、土砂災害にあった広島の稲籾を使って三角おむすびをこしらえたりすることで、被災地への連帯を表明。また、淺井裕介はいつものように公開制作で、奥行き20メートルほどもある展示室の壁、床、天井まで泥絵具でびっしり埋め尽くそうとしているが、ここで使われている絵具はアジアやアメリカなど各地で採集した土だそうだ。「見えないつながり」は日本中、世界中に広がっている。

2015/01/23(金)(村田真)

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ガブリエル・オロスコ展──内なる複数のサイクル

会期:2015/01/24~2015/05/10

東京都現代美術館[東京都]

つまんなかったなあ。開館以来20年、都現美で見た展覧会のなかでいちばんつまんなかった。たとえば《ヌードル・フォール》と題する作品は、中身を食べ終わった空っぽのカップ麺の容器を壁に展示したもの。フタが開いて麺や汁が流れ落ちたのか? よく見るとフタに印刷されたうどんが滝のように見えなくもないけど、いまさらデュシャンじゃあるまいし。こんな作品が、約70平方メートルはありそうな広大な壁に1点だけ。こういうのを「蛮勇」というのだろう。

2015/01/23(金)(村田真)

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菅木志雄──置かれた潜在性

会期:2015/01/24~2015/03/22

東京都現代美術館[東京都]

これはスゴイ。なにがスゴイかって、40年以上まったく仕事にブレがないこと。この40年間の美術の動きを乱暴に振り返ってみれば、70年代は画廊を回ると、菅さんをはじめ石や木を並べたような「もの派」系の作品が美術界を占めていたが、80年代に入ると絵画が復活し、菅さんは徐々に隅のほうに押しやられていった。でもほかのもの派の連中が絵画や彫刻や版画に転じても、菅さんだけは動じることなくもの派ど真ん中の作品を発表し続けた。その間、本人は自分の作品が時代遅れだとか不安にかられたことはないのだろうか。と、ふと思ったりもする。出品は新旧交え、大型インスタレーションが約10点。旧作はオリジナルが現存しないので再制作したものだが、美術館の空間に合わせて新たに制作したのでサイズもプロポーションも異なり、その意味では旧作とも新作ともいいがたい。そもそも菅さんの場合、何度も繰り返すけど40年以上ブレがないので、旧作も新作も再制作もほとんど変わりないんじゃないかという気がしてくる。それもスゴイ。

2015/01/23(金)(村田真)

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2015年02月15日号の
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