2019年09月01日号
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artscapeレビュー

2015年02月15日号のレビュー/プレビュー

世界侵略:ロサンゼルス決戦

格安上映につき、公開時は映画館スルーした『世界侵略:ロサンゼルス決戦』(監督:ジョナサン・リーベスマン)を大画面で見る。ドキュメンタリー風の戦闘シーンは確かに迫力だが、異星人を相手にした戦争映画であり、SF的ではない。むしろ、アメリカの大都市を激しい戦場にするためには、異国からの攻撃ではなく、異星人の侵略という設定が都合よかったのだろう。

2015/01/18(日)(五十嵐太郎)

山本昌男「浄」

会期:2015/01/14~2015/02/07

Mizuma Art Gallery[東京都]

2009年以来というから、山本昌男の個展もひさしぶりだ。山本は日本よりもむしろアメリカやヨーロッパで評価の高い写真作家で、モノクロームの小さなプリント(時には微妙な調色が施される)を、壁面にまき散らすようにインスタレーションする作品で知られている。写真に写っているのは、身辺のこれまた小さな出来事が多いが、それらの付けあわせ方に独特の繊細で軽やかな美意識が働いており、「俳句的な表現」と評されることも多い。
今回のMizuma Art Galleryでの展示では、その山本の作品世界がかなり大きく変わりつつあることに驚かされた。「浄」シリーズの被写体は「作家の目に留まった路傍の石や木の根」であり、それらが黒バックで、クローズアップ気味にしっかりと撮影されている。複数の写真が響きあうように配置されていたこれまでの作品と比べると、一点一点の自立性が高く、しかも裏打ちされたパネルやフレームに入れる形で、それぞれ独立して展示されている。山本の被写体を見つめる眼差しも、緊張感と強度を孕んだものになってきていた。奥の部屋は、写真に鉄の鎖、鏡などを配したインスタレーションの展示だが、それらもシンプルで重々しい印象を与える。
彼が今後どんな風にこのシリーズを展開していくのかは、まだわからないが、新たな領域に踏み出していこうとする強い意欲を感じた。むろん以前の作風との融合・合体も考えられると思うので、もう少し、どうなっていくのかを見守っていきたい。

2015/01/20(火)(飯沢耕太郎)

挿絵画家 依光隆 展

会期:2015/01/19~2015/01/31

文房堂ギャラリー[東京都]

3年前に亡くなった挿絵画家の回顧展。SF小説、児童文学、科学イラスト、法廷スケッチなど半世紀におよぶ画業を約250点の原画で振り返っている。ライフワークは1971年にスタートしたハヤカワ文庫の「宇宙英雄ローダン」シリーズらしいが、ぼくはそれ以前の児童書の表紙や挿絵でなじんでいたはず。はず、というのは、たとえば『海底2万マイル』とか、はっきり覚えてないけどたしかこんな挿絵だったという漠然とした記憶があるからだ。いわゆる美術史の名画を知るのはそれ以後のことだから、ぼくにとっては小松崎茂と並ぶ初期の絵画体験だった。当時は超絶技巧(そんな言葉なかったが)だと思っていたけど、いま見るとそうでもなかったりして。

2015/01/20(火)(村田真)

ホテル・オークラ東京

[東京都]

建替えになるということで、久しぶりにホテル・オークラ東京を訪れた。夜間は特別のライトアップをやっており、光と影の効果が想像以上に建物の美しさをひきたてる。本館(1962)、別館(1973)とも、ロビーを谷口吉郎が設計しているが、金沢で多く見てきた作品群とやはり共通するテイストであり、モダンながら、どことなく和を感じさせる空間だ。また現在からは、昭和の懐かしさも伴っている。


左:大倉集古館 右:新館ロビー


2015/01/21(水)(五十嵐太郎)

蜷川実花:Self-image

会期:2015/01/24~2015/05/10

原美術館[東京都]

期待を裏切らない出来栄えといえるだろう。東京・品川の原美術館での蜷川実花展は、会期の長さを見てもわかるように力の入った展覧会だった。
会場は大きく1階と2階に分かれている。1階エントランスのギャラリー1は、3面スクリーンによる映像・音響インスタレーション(音楽/渋谷慶一郎)で、金魚の群れ、群衆、眼、唇などのイメージが、壁一面に浮遊する。ギャラリー2には写真集『noir』(2010年)の収録作品とその発展形の写真が、壁紙のように大伸ばしされた画像の上に架けられていた。ここまでは、従来の「見慣れた」作品世界を、見世物小屋的に開陳した造りになっている。
だが、2階は雰囲気ががらりと変わって、「PLANT A TREE」(2011年、撮影は2010年)、「Self-image」(2013年)のシリーズから抜粋した作品が並んでいる。この2作品は、今のところ蜷川のベストというべきシリーズであり、新たな作品世界を、数を押さえて抑制した展示で見せていこうという強い意欲が感じられた。特に最後のギャラリー5に展示されたモノクロームのセルフポートレートは、まさに「生身に近い、何も武装していない」蜷川自身をさらけ出すという暴挙を、あえて試みた注目作と言える。2階の廊下の床を白黒の市松模様に貼り替えるなど、会場全体の構成を含めて、蜷川の持ち前の演出力が際立った展覧会といえるのではないだろうか。
だが、「期待を裏切らない」というのは予想の範囲内でもある。超満員のオープニングを見ればわかるように、日本の写真界を牽引する立場に立った彼女に対しては、注目度も格段に上がっている。「次」が常に求められていることを心に留めていてほしいものだ。

2015/01/22(木)(飯沢耕太郎)

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