artscapeレビュー

2011年12月15日号のレビュー/プレビュー

世界制作の方法

会期:2011/10/04~2011/12/11

国立国際美術館[東京都]

アメリカの哲学者、ネルソン・グッドマンの著書と同名のタイトルの展覧会。エキソニモ、パラモデル、伊藤存+青木陵子、クワクボリョウタ、木藤純子、鬼頭健吾、金氏徹平、大西康明、半田真規の6人と3組のアーティストがそれぞれの方法論で展開する作品世界を紹介する。暗闇のなかを小さなライトをつけた鉄道模型が走り、周囲に設置されたザルや色鉛筆などの影がまるで建物や自然の風景であるかのように四方の壁面に映しだされるクワクボリョウタのインスタレーションは特に魅力的な作品だった。そこでは中学生の団体も一緒だったのだが、光と影に包まれる薄暗い空間で、あるとき一斉におお!という歓声があがる場面にも遭遇、それに私も興奮した。ダイレクトに観客のイマジネーションを喚起する力、見飽きさせないその強度の持続力もすごいと感じる作品。また、伊藤存+青木陵子のアニメーションとドローイング、大西康明のインスタレーションなど、アーティストの自由な想像力と創造力がうらやましく感じられるものがいくつも見られ、豊かな気持ちになった展覧会。

2011/11/18(金)(酒井千穂)

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木野智史 展

会期:2011/11/14~2011/11/19

ギャラリー白[大阪府]

大きく開いたアサガオのような円錐形の磁器のオブジェが並んでいた。会場の奥には、まだ花が開いていないそのつぼみを想起させる形のものもひとつだけある。私の肩幅くらいだろうか、円錐形の作品は結構大きなサイズで、薄い器のようなそれらのフォルムや淡い釉薬の色あいが、なんとも儚げな雰囲気を醸していた。なかでも、表面にスリットがつけられたものは繊細なイメージが掻き立てるのだが、近づいてよく見ると、滑らかな質感のそれは意外にも逞しい。《翠雨》というタイトルがついていた。作家は現在、京都市立芸術大学大学院陶磁器科で学んでいるのだそう。彼の作品ははじめて見たのだが、薄いイメージの向こう側に控えているずっしりとした存在感が記憶に残る。次の発表もぜひ見てみたい。

2011/11/18(金)(酒井千穂)

山内裕美 展

会期:2011/11/14~2011/11/19

Oギャラリーeyes[大阪府]

山内裕美の作品を久しぶりに見た。以前は画面に穴を開けるように網目状のドットを用い、自身が目にした光景を抽出するように描いていたのが、今回の発表では絵の具そのものの色彩や物質的な存在感というマテリアリティを追求して、より抽象的な絵画を描こうとしているようだった。先入観のせいだろうか、画面を見ているとやはり、空や山など、風景を連想するのだが、これから山内の表現はさらに変化していくような気がしている。今後も注目したい。

2011/11/18(金)(酒井千穂)

中村キース・ヘリング美術館

[山梨県]

小淵沢のキース・ヘリング美術館で、アメリカのコレクターを描いた映画『ハーブ&ドロシー』の上映会があり、アフタートークの座談会に呼ばれた。この美術館、医薬関係の実業家、中村和男氏が集めたキース・ヘリングの作品を公開するため八ヶ岳山麓の小淵沢にオープン。設計は北河原温で、垂直・水平線を排した展示室といい、赤、白、黒だけの外観といい凝りに凝っている。美術館建築はシンプル・イズ・ザ・ベストだが、リゾート地では建築そのものも客寄せの目玉になるため、必ずしもシンプルがベストとは限らないようだ。観客はまず長い通路を下って暗い展示室に入り、黒い壁面から浮かび上がるキースの絵と対面。ゆるやかなスロープを上ると、白く塗られた明るい展示室に出る。地下鉄の落書きからアートシーンに浮上し、親しみやすいキャラクターで人々を楽しませながらエイズでなくなったキース・ヘリングの短い人生を、闇と光で表現しているのだという。近隣にはプライベートスパやレストラン、温泉宿、アトリエもあって快適。美術館だけなら1回見れば十分だが、これだけそろっていればまた来てみたくなる。

2011/11/19(土)(村田真)

アジール京都公演

会期:2011/11/18~2011/11/19

永運院[京都府]

永運院という寺院で開催されたダンスと三味線、唄、映像による舞台作品。障子をスクリーンに見立てて映し出される飯名尚人の映画、西松布咏の三味線と唄、寺田みさこのダンスによって、江戸時代に実在した縁切寺のエピソードと現代の男と女の物語が交錯しながら展開するというものだった。庭の木々も紅葉し始めた、風情ある夜の会場自体の趣きが上演作品のイメージに似合っていて、幻想的な雰囲気を演出していたのも良かったが、なによりも感動したのは西松布咏による三味線と唄の音色。私はまったくというほどそれらに関する知識がなく、それは残念なのだが、演奏法や唄の形式の豊かなバリエーション、その高度なテクニックをここではじめて知ることができた気がする。物語の情景、情緒の描写が見事な語りの抑揚、旋律の味わい深さなど、ダンスや映像という表現よりもうんと新鮮に感じられる機会だった。

2011/11/19(土)(酒井千穂)

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