artscapeレビュー

2011年01月15日号のレビュー/プレビュー

ドマーニ・明日展 2010

会期:2010/12/11~2011/01/23

国立新美術館[東京都]

なんだろう、この満たされない気分は。出品者は三好耕三、遠山香苗、流麻二果、深井聡一郎、赤崎みま、町田久美ら12人で、いずれも文化庁から海外研修に派遣された作家ばかり。その成果発表の場なのに、というか、成果発表の場だからなのか、ちっとも熱が感じられない。個々には、特定の形態にこだわる三好の写真や、清新な色彩と思い切りのいい筆跡の遠山や流の絵画、彫刻を相対化したような深井のユーモラスな陶など好みの作品はあるものの、会場が広くて天井が高く観客も少ないせいか、白く冷たい空間ばかりが目立ち、おまけに各作家ごとのつながりが希薄なため、作品同士が相乗効果を生み出すどころか相殺し合っているようにも感じられるのだ。だいたい出品作家は文化庁から派遣されたという共通項があるだけで、ジャンルも派遣年度も派遣先も異なっており、しかも展示の順序は派遣年度順に並べただけというお役所的なもの。国税で派遣したのだから成果を見せてという事務的手続きからは、つくる喜びも見る楽しみも生まれない。葉山の「プライマリー・フィールドII」とは正反対の人選・展示である。

2010/12/20(月)(村田真)

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プレビュー:細江英公 写真展 花泥棒

会期:2011/01/08~2011/02/13

TANTOTEMPO[兵庫県]

写真家の細江英公が、下着デザイナーで画家、文筆家としても活躍した鴨井洋子とコラボして1966年に発表した写真作品から、34点を展覧。鴨井作の人形との不思議な旅を捉えた作品は、同年代に細江が発表した『薔薇刑』の高密度な耽美性とは別の、程よく力の抜けたユーモアと哀愁を漂わせる。会期後半の2/5には細江が来場してトークイベントを行なうほか、神戸ファッション美術館でも「抱擁」と「ルナ・ロッサ」シリーズから17点をチョイスした個展が同時開催される(1/27~2/8)。

2010/12/20(月)(小吹隆文)

プレビュー:森村泰昌 なにものかへのレクイエム

会期:2011/01/18~2011/04/10

兵庫県立美術館[兵庫県]

2010年3月の東京都写真美術館を皮切りに、豊田市美術館、広島市現代美術館で開催されてきた本展が、最終巡回地の兵庫県立美術館にようやくやって来る。20世紀の歴史を彩った男たちに扮して、時代の核心に触れるような感覚で制作された写真、映像の数々が、広大な展示スペースを持つ兵庫県立美術館でどのように展示されるのかに注目したい。特に新作映像作品《海の幸・戦場の頂上の旗》は、かつてないほど雄弁に森村の芸術観が表明されている。彼の写真作品しか知らない人は是非見ておくべきだ。なお、兵庫県立美術館では本展に合わせて小企画展「『その他』のチカラ。──森村泰昌の小宇宙」を同時開催する。コレクターのO氏が収集した森村作品は、普通のコレクターでは入手しえないレアアイテムの宝庫。併せて観賞すれば、感動もひとしおである。

2010/12/20(月)(小吹隆文)

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プレビュー:加賀城健展“transFLAT”

会期:2011/01/15~2011/02/12

YOD Gallery[大阪府]

染色工芸の世界ではタブーとされる滲みやボケなどをあえて生かして、抽象絵画のような作品へと昇華させる加賀城健。これまでも新機軸の作品を多数発表してきたが、本展では、染色・脱色した布の上からバインダーという液体樹脂で描いた新シリーズ「Veil」を中心に発表。平面作品であると同時にインスタレーションでもある凝った展示で観客を迎える。

2010/12/20(月)(小吹隆文)

プレビュー:フジイフランソワ展

会期:2011/01/10~2011/01/22

Oギャラリーeyes[大阪府]

大和絵や琳派など、日本の古典絵画の体裁をとりながら、ねじれたセンスとブラックな笑いをまぶして独自の絵画世界にまとめ上げるフジイフランソワ。今回は、雀やナマコに鈴をつけた《愛玩》シリーズと、小鼓、茶器、小動物が戯れる様子を描いた《九十九髪》シリーズを出品。上品さと胡散臭さが同居する魅惑的なその世界は、一度ハマるとやみつきになること請け合いだ。

2010/12/20(月)(小吹隆文)

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