artscapeレビュー
2011年12月15日号のレビュー/プレビュー
今和次郎 採集講義展
会期:2011/10/29~2011/12/11
青森県立美術館[青森県]
青森県立美術館の今和次郎展では、多くの図面やスケッチを用いて、民家調査、バラック装飾社、考現学、そしてあまり知られていない彼の設計活動を紹介していた。ちなみに、内容は、工学院大学のコレクションをもとにほぼ構成されている。
2011/11/02(水)(五十嵐太郎)
せんだいスクール・オブ・デザイン 2011年度秋学期開講式記念講演(名和晃平)
会期:2011/11/03
開講式の名和晃平によるレクチャーでは、男性作家として最年少での個展となる東京都現代美術館の展示と、京都のSANDWICHにおけるクリエイターの横断的な制作活動のプラットフォームが紹介された。前者の報告からは、彼が情報化の時代における先端的な造形を探索していることがよくわかる。また名和は学生時代から後者の活動につながるイベントを企画していたという。しかし、人から恵まれた環境をあらかじめ与えられるのではなく、自発的だからこそ、個性的かつ創造的な場を生むパワーに改めて感心させられた。
2011/11/03(木)(五十嵐太郎)
エマージング・ディレクターズ・アートフェア「ウルトラ004」
会期:2011/10/28~2011/11/03
スパイラルガーデン[東京都]
不況にも負けず、震災にも原発事故にもめげずに今日もアートフェアが開かれる。先月は東美アートフェアがあったし、このあとプリュス・ジ・アートフェアもひかえている。はたして売れるんだろうかと心配になるが、続いてるってことはそれなりに需要があるんだろう。そんなアートフェアのなかでも、この「ウルトラ」は画廊単位の出展ではなく、画廊の若手ディレクター(40歳以下)が個人で作家を選ぶ珍しい形式。だが悲しいことに、ぼくはほとんどのディレクターを存じ上げないし、ディレクターとほぼ同世代かそれ以下の出展作家も知らない人が多い。世代間のギャップは埋めがたいなあ。おそらく購買者も年配層より彼らに近い若い人たちが多いのだろう。作品も具象イメージの小品や工芸的作品が大半を占め、刺激的大作や破天荒な問題作は皆無に近い。若いのに、というより若いから、なのか。そもそもアートフェアにそんな問題作を期待するほうが間違っているのだが。
2011/11/03(木)(村田真)
TARO LOVE展──岡本太郎と14人の遺伝子
会期:2011/10/25~2011/11/06
西武渋谷店A館7階特設会場[東京都]
ほとんど話題にならなかったけど、こんな展覧会やってたんだね。生誕100年の岡本太郎の遺伝子を受け継ぐアーティストたち、ということで太郎の孫の世代の会田誠、青山悟、淺井裕介、風間サチコ、山口晃らが出品。山口の《山愚痴屋澱エンナーレ》が冴えている。旧作が中心だが、日本画と西洋画の遠近法を逆転させたり、「絵画はこんなに役に立つ」と称してキャンバスを木枠から外してたき火にしたり、河原温の《日付絵画》をカレンダーにしたり、アイディア満開。会田と青山はデビュー前の初期の作品を開陳してるし、風間は移動式立体版画(?)を出している。たとえ旧作で完成度が低くても、ほかではあまり見られない実験的作品が多く、なんかトクした気分。三潴末雄氏と中世古佳伸氏のキュレーションがしっかりしているのだろう。苦情が来たため会期なかばで中止するという暴挙に出た今年初めの「シブカル展」の名誉を回復するためにも、渋谷西武はもっと宣伝すればよかったのに。いや、宣伝してまた苦情が来るのを恐れたか。見逃してしまったが、店内のエントランスや通路など数カ所でも荒神明香や若木くるみらの作品が展示されていたらしい。残念。
2011/11/03(木)(村田真)
『ニーチェの馬』
[埼玉県]
タル・ベーラ監督の最後とされる映画『ニーチェの馬』を見る。おそろしく、カット数が少ない。ひきのばされたミニマル・ミュージックのごとく、極小にまで削ぎおとされた要素。農夫と娘と馬と訪問者、わずかな登場人物。クライマックスはない。たえず強風が吹きすさぶ谷間の家の窓から木が見える。そうしたカスパー・ダヴィット・フリードリヒの絵のような、風景と構図だけで映画が成立している。ロケハンでふさわしい場所を探し、そこにセットとして家をまるごと一棟建設したという。しかし、単調な反復がほころび、やがて世界が壊れていく。いや、世界はすでに終わっていたのかもしれない。創世記を反転したように、物語が終焉に向かっていく。
2011/11/04(金)(五十嵐太郎)