artscapeレビュー

2014年12月15日号のレビュー/プレビュー

イエス来日公演(東京)

会期:2014/11/23~2014/11/25

東京ドームシティホール[東京都]

イエスの来日公演に行く。最盛期のアルバム「危機」と「こわれもの」をそのまま再現する曲目、しかもスティーブ・ハウとクリス・スクワイアが演奏しているので、満足できる内容だった。改めて、前者のギターは独創的である。もともと若さをウリにするバンドではないだけに、メンバーの外観が老いても、ちゃんと演奏していれば、あまり違和感を覚えない。一方、今年行ってきたエイジアの来日公演は、スティーブ・ハウが抜け、若いギタリストを入れ、それ以外はオリジナルのメンバーだったが、ジョン・ウェットンのヴォーカルがだいぶ衰えていたのが残念(それでも楽しいのだが)。イエスが迎え入れた新しいヴォーカルが、ちゃんと当時の再現のように歌っているのとは対照的である。バンドの老いという意味では、今年、MR.BIGの公演も見たのだが、ドラムがパーキソン病を患いながらも、サポートのドラムを入れながら、笑顔で出演し、それでも元のフルメンバーで演奏している姿は、ある意味で感動的だった。またビリー・シーンのベースが相変わらず、神がかっていたことも感心した。

2014/11/25(火)(五十嵐太郎)

AGC studio Exhibition No.12 社会との関わりを見詰める建築模型展「新しい建築の楽しさ2014」展、地球の音楽展

AGC studio 1階エントランス ギャラリー[東京都]

京橋AGC STUDIOの「新しい建築の楽しさ2014」展へ。社会との関わりを考える建築模型の若手グループ展である。薄い透明な面を無数の細い柱で支える、萬代基介の夢のような展示台が素晴らしい。ここのすぐ近くのATELIER MUJI「地球の音楽展」も、彼の会場デザインである。透明な球の群が浮かぶ、インスタレーションだ。彼は石上純也のテイストを受け継ぎながら、愛知県のスタジオ・ヴェロシティとは異なる展開をしている。

AGC studio Exhibition No.12 社会との関わりを見詰める建築模型展「新しい建築の楽しさ2014」展
会期:前期 2014/11/06~12/26 後期 2015/01/16~02/21
会場:AGC studio 1階エントランス ギャラリー

地球の音楽展
会期:2014/11/21~2015/03/01
会場:無印良品有楽町2F ATELIER MUJI

2014/11/26(水)(五十嵐太郎)

虎ノ門ヒルズ

[東京都]

日本設計が手がけた《虎ノ門ヒルズ》(2014)に立ち寄る。道路上に建設され、下を環状二号線が貫通する実験的な巨大開発のプロジェクトだ。トンネルの勾配にあわせ、人工の傾斜地がうまれ、これを巧みに利用しながら、屋内外に広場やストリートの感覚を持ち込む。ちょうどジャウメ・プレンサや谷尻誠のインスタレーションを設営中だった。

2014/11/26(水)(五十嵐太郎)

東大門デザインプラザ

[韓国、ソウル市]

ソウルのザハ・ハディドが設計した《東大門デザインプラザ》(2014)を訪れる。部分オープンしたものを2010年に見たときの評価は最悪だったが、全体像を見て印象は良くなった。彼女らしいダイナミックな空間で、多くの観光客も集まる、新しい都市のランドマークになっている。他のザハ建築と同様、とくに屋内外の通路、やたら天井高のある螺旋のスロープ、階段などの動線が徹底的に見せ場となっている(ショートカットせず、空間の体験を強いるべく無理矢理長く歩かせられるのだが)。ただし、逆に展示空間は弱い。4階の子供向け常設も、彼女の空間と無関係の展示デザインである。ザハの場合、移動の空間が魅力的なのだから、空港や駅など、交通施設の相性が良いだろう。デザインミュージアムは常設のコレクション展示がなく、コンテンツがまだスカスカの印象だった。内部への自然光が少ない。リベスキンドのユダヤ博物館と同様、展示がないときが、一番カッコよいタイプの空間である。夜の表情を確認すべく再訪したら、内からの光の演出をやりたかったので、開口を減らしたのかとも思った。夜も人気は絶えず、特にカップルが多い。ある意味でコンテンツがなくても、空間の力だけでこれだけの集客があるのは凄いことだ。


2014/11/27(木)(五十嵐太郎)

高岡美岐展

会期:2014/11/25~2014/11/30

アートスペース虹[京都府]

普段目にするごく身近な風景を主なモチーフにした絵画を発表している高岡美岐の新作展。歩きながら携帯電話のカメラで撮影した沢山の写真を水彩で描き起こし、それらのドローイングの中から選び取ったいくつかの場面を合わせてさらに一枚の油彩画に描き直す、というユニークな制作法を続けている作家だ。今回発表されたのは、作家の制作アトリエから仕事場へ向かう経路を描いた連作。雪の朝、積もった雪で真っ白になったロータリーの光景、同じ朝の道路のカーブなど。生々しい体験を衝動的に写真に残し、後から記憶のイメージへと時間をかけて移し替えていく高岡の制作はその手法もさることながら絵自体にも作家の感情が複雑に描きこまれているから面白い。次はどんな季節のどんな場所が描かれるのかまた楽しみだ。

2014/11/28(酒井千穂)

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