artscapeレビュー

2014年12月15日号のレビュー/プレビュー

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会期:2014/09/13~2015/01/04

エスパス ルイ・ヴィトン東京[東京都]

エスパス・ルイ・ヴィトンで公開制作していたソ・ミンジョンの作品が完成した。いつもの歴史的な記憶を抱えた建物の1/1再現ではなく、東京の風景に触発された非実在的な建物が破壊する瞬間のインスタレーションである。今回はとくに、軽やかなエスパスの空間との呼応、また閉じたホワイトキューブではなく、まわりの風景が一緒に見えるのが素晴らしい。ソ・ミンジョンの死んだ鳥の旧作もエスパスで、それを爆破する映像の新作を一階のスクリーンで展示する。また展示とは別に、入り口付近では、The icon and the iconoclastsのプロジェクトで、フランク・ゲーリー、シンディ・シャーマン、川久保玲らがデザインしたバッグも置いていた。

2014/11/30(日)(五十嵐太郎)

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プレビュー:蛇谷りえ×飯室織絵「ローカルへの“入り口”を編集する ~鳥取と長野から」『The World Above』刊行記念

会期:2014/12/20

本屋B&B[東京都]

鳥取県で元旅館だった建物を譲り受け、2012年よりゲストハウス&カフェ「たみ」を運営する三宅航太郎と蛇谷りえ。「うかぶLLC」という社名で、このゲストハウスを運営しながら印刷物をメインとしたデザイン企画制作や地域文化振興を目的としたプロジェクトの企画なども行なっている。たとえば、「たみ」にて音楽家・野村誠によるピアノ演奏会を開催したり、地元の空き家を会場にアートイベントを催したりと、最近の彼らの活動にはますます興味をそそられる。
その「うかぶLLC」が台湾系アメリカ人の写真家パトリック・ツァイと共同制作した写真集『The World Above』(
http://ukabullc.com/works/2015/01/764.php)が先頃刊行された。今回の対談は「ひとりの青年が1年間におよぶ登山の旅に出る」というストーリーをもとに、鳥取の山々で撮影されたこの写真集の発売記念イベント。写真集も手に取ってみたいが、その制作エピソードや地域との関わりなど、ここではまた面白そうな「ローカルな地域への”入り口”」について聞くことができそう。

Patrick Tsai 写真集《The World Above》とカレンダー『The World Above』より

2014/12/14(酒井千穂)

プレビュー:関美穂子PART1.「布」

会期:2015/01/09~2015/01/19

Kit[京都府]

京都在住の型染め作家、関美穂子の2期にわたる個展が京都の人気雑貨店にて。近年、倉敷意匠計画室プロデュースによる雑貨展開、和紙職人・ハタノワタルとのコラボレーションによる襖紙制作など、ファンを増やし続ける作家が、型染めのシンプルな魅力に立ち返る。PART1として、大きな布による作品が制作されている模様。

2014/12/14(日)(松永大地)

プレビュー:八木良太展「サイエンス/フィクション」

会期:2014/12/21~2015/01/17

神奈川県民ホールギャラリー[神奈川県]


八木良太のような、境界(例えば美術と音楽)を横断して活動するアーティストにとって、身軽さや新たな回路を創出することはひとつの性質である。個々の作品の刺激も興味深いが、やはりその範囲は小規模で作品と鑑賞者一人の対話に留まる。しかしそれが大きな会場にて物語として紡がれた個展を構成する一つとなるなら、おそらく別の鑑賞者にも影響を伝導し、展覧会自体が有機的なものとして新たな認識が生まれるのではないだろうか。と勝手に想像しているが、単純に「SF=すこし不思議」として、どのような展覧会として構成されているのか、期待が高まる。

2014/12/14(日)(松永大地)

カタログ&ブックス│2014年12月

展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。

赤瀬川原平の芸術原論 1960年代から現在まで

著者:ウィリアム・マロッティ、菅章、松岡剛、水沼啓和、山下裕二
発行:千葉市美術館、大分市美術館、広島市現代美術館、読売新聞社、美術館連絡協議会
デザイン:大岡寛典事務所
発行日:2014年10月28日
価格:2,300円(税別)
サイズ:257 x 180 x 34mm 、442頁

2014年10月28日から千葉市美術館での開催を皮切りに全国を巡回する同名の展覧会のカタログ。展覧会オープンの前々日に逝去した赤瀬川原平の60年代から晩年にいたるまでの50年あまりにわたる美術活動を一望する大著となっている。ネオ・ダダ、読売アンデパンダン、ハイレッド・センター、千円札裁判、櫻画報、超芸術トマソンと路上観察学会、ライカ同盟など、その活動は多岐にわたり、さまざまなジャンルを飛び越え、世間を挑発し続けた。篠原有司男、中西夏之、谷川晃一、末井昭、荒俣宏、南伸坊など、彼とともに時代を生き、影響を与えあった豪華な顔ぶれによる証言も収録。

現代美術史日本篇 1945-2014

著者:中ザワヒデキ
デザイン、発行:アートダイバー
発行日:2014年11月21日
価格:1,500円(税別)
サイズ:210 x 257 x 7mm、136頁

2004年に東京都現代美術館で開催された「MOTアニュアル2004私はどこからきたのか/そしてどこに行くのか」での著者の出品作《現代美術史日本篇》を下敷きに、その後の美学校での講義を経て、震災後の動向までも含めた改定版が発行された。方法主義という独自の視点で現場から見続けた中ザワヒデキによる「日本現代美術史」。

LIXIL BOOKLET 科学開講!京大コレクションによる教育事始

企画:LIXILギャラリー企画委員会
編集:石黒知子+井上有紀
AD:祖父江慎
デザイン:柴田慧(コズフィッシュ)
発行:LIXIL出版
発行日:2014年12月15日
価格:1,800円(税別)
サイズ:210 x 205 x 5mm 、77頁

2014年12月5日から大阪のLIXILギャラリーでスタートした同名の展覧会のカタログ。京都大学総合博物館所蔵の明治期に日本の近代化の過程で科学教育のために輸入・製造された実験器具、模型、標本、掛図を紹介している。

2014/12/15(月)(artscape編集部)

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