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2014年12月15日号のレビュー/プレビュー

水/ガラス

[静岡県]

前回、日向邸の隣にある隈研吾による《水/ガラス》(1995)は堅く門を閉じ、外からしか眺めることができなかったが、現在は用途が変更し、宿泊に使えるようになり、エントラスの内側くらいまで入ることができた。が、それでは海に溶け込むあの有名なシーンは見えない。

2014/11/15(土)(五十嵐太郎)

《起雲閣》、「高須英輔展 ─ 輾てん轉 ─ in 起雲閣」

会期:2014/10/03~2014/11/25

起雲閣[静岡県]

熱海の《起雲閣》(1919)も、かつての豪邸であり、後に旅館に転用され、文学者に愛された。したがって、それぞれの文豪の展示が各部屋でなされている。とくに「玉姫」「玉渓」の部屋(1932)は、ステンドグラスも動員する、和洋亜の折衷ぶりが凄まじい。日向邸も、ある意味ではタウトというフィルターを媒介した折衷の建築だが、こちらはベタな併用で、一般の観光客にもわかりやすい。ちなみに、全然ローマ的ではないと思うが、「ローマ風浴室」も興味深い。増築部分では、ちょうど高須英輔展「輾てん轉」を開催しており、古材を再活用した構成の作品群が並ぶ。


起雲閣

記事左上:ローマ風浴室

その後、熱海銀座、中央町、清水町のあたりを散策する。今年、3月に混流温泉文化祭で訪れた際にもまわったが、昭和の建物が多く残っていたり、坂の地形と壁が隣接する小建築群がかもしだす風景は独特の雰囲気をもつ。いまは単に古いと思われるかもしれないが、今後残れば、貴重になるはずだ。

熱海

2014/11/15(土)(五十嵐太郎)

全国設計行脚

会期:2014/11/16

東北大学青葉山キャンパス人間・環境系教育研究棟[宮城県]

日本各地の学部3年生が1年かけて2025年の建築を設計する課題にとりくむ、全国設計行脚の企画に講師として参加した。メンバーは大阪、広島、東京をめぐり、今回は東北大学を訪問し、小学校、ホスピス、ポスト百貨店、築地市場の再開発など、それぞれのエスキスとレクチャーを行う。5分の発表に対し、15分のエスキスを13セットである。こちらは1人で全部対応するので大変だった。来年3月に設計を終了し、展覧会を開くという。

2014/11/16(日)(五十嵐太郎)

阪本トクロウ「周縁」

会期:2014/10/31~2014/11/23

アートフロントギャラリー[東京都]

青い空に白い雲、波紋が揺らぐ水面、部屋の片隅、白い壁、地面と水面が入り組んだ地図など、ふつう絵の脇役である背景だけを描いた絵。というと主役を消したトリックアートみたいだが、主役がいなくなったのではなく、背景を主役にしたのだ。いわば地から図を除くのではなく、地が図になった状態。これはおもしろい。日本画出身、おもに高知麻紙にアクリルで描いている。

2014/11/16(日)(村田真)

六甲ミーツ・アート 芸術散歩 2014

会期:2014/09/13~2014/11/24

六甲ガーデンテラス、自然体感展望台六甲枝垂れ、六甲山カンツリーハウス、六甲高山植物園、六甲オルゴールミュージアム、六甲山ホテル、六甲ケーブル、天覧台、六甲有馬ロープウェー(六甲山頂駅)[兵庫県]

六甲山上の様々な施設やその屋外に設置された作品を、ピクニック感覚で周遊しながら楽しもうという「六甲ミーツ・アート」。各施設での作品展示のほか、会期中にはアーティストによるパフォーマンスライブやワークショップも多数開催されるアートイベントで、今回5回目の開催を迎えた。今年は総勢42組のアーティストが参加。鑑賞して回るのにも会場間を移動するのにも時間がかかるのだが、六甲山の自然やその展望なども含めて堪能することこそがこのイベントの狙い。歩くのが苦手でなければ、アート以外にもいろいろなことが楽しめる展覧会だ。今回、六甲オルゴールミュージアムの中庭に設置された小屋の中で、ユーモラスな被り物をつけてひとり黙々と制作に取り組んでいた三宅信太郎、そして六甲高山植物園内に展示されていた若木くるみのパフォーマンス映像の前で、立ち止まって釘付けになっている人たちを目にした。隣で作品を見ていたら、私のように作品鑑賞を目的として会場を訪れたわけではないと思われるその来場者たちから「これ何ですか?」と話しかけられたことも印象に残る。ここで見ず知らずの人たちとの会話が生まれるなんて、このイベントならではのことだと新たな魅力を知った気分になったのが嬉しい。「六甲ミーツ・アート」は回を重ねるごとに、開催を楽しみにしているファンも増えているのではないだろうか。私もまたその一人だ。

2014/11/17(酒井千穂)

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