2019年11月15日号
次回12月2日更新予定

artscapeレビュー

2014年12月15日号のレビュー/プレビュー

尾形一郎/尾形優「中華洋楼 Eclectic Chinese House」

会期:2014/11/05~2014/11/22

ZEN FOTO GALLERY[東京都]

建築家でもある尾形一郎、尾形優の写真展示には、いつも工夫が凝らされている。今回ZEN FOTO GALLERYで発表されたシリーズのテーマは中国広東省の穀倉地帯に忽然と出現した、何とも奇妙な中洋折衷の建築群(洋楼)である。その互いに似通ってはいるが微妙に違うフォルムが増殖していく、映画セットのような人工性を強調するため、作品を大きさが異なるフレームに入れて床に並べる形で展示した。つまり、かなり大きな840×1050ミリのフレームから、その厚み分(40ミリ)ずつ小さくなっていって、最後は240×350ミリの小さなフレームになるのだが、それらが一つの箱に入れ子状におさまっていて、一点一点取りだして並べることができるようになっているのだ。(以下の動画を参照)

それだけではなく、今回は石灰を水で練った漆喰を塗布したシートに顔料を吹き付ける、フレスコ画の技法を用いてプリントしているのだという。その結果として、元の建物の風化したコンクリートの質感が実に丁寧に再現されていた。
今回の展示は、先に本欄で紹介した彼らの新著『私たちの「東京の家」』(羽鳥書店)の刊行記念展でもある。『私たちの「東京の家」』には「中華洋楼」だけではなく、メキシコの「ウルトラ・バロック」の教会、ナミビアの砂に埋もれかけたドイツ移民たちの住宅、ギリシャの白い箱形の鳩小屋などを撮影した写真とテキストもおさめられている。ということは、もしそれらの写真群の展示が実現したならば、今回と同様に相当に凝った仕掛けのインスタレーションになることは間違いないだろう。それはぜひ見てみたい。そろそろ美術館クラスの大きな会場での展示を考えてもいいのではないだろうか。

2014/11/08(土)(飯沢耕太郎)

宇野享 / CAn | Susumu Uno「-ing」展

会期:2014/10/31~2014/11/24

Gallery Nica[愛知県]

名古屋の大須へ。ハセビル8の2階Gallery Nicaの宇野享/CAn「-ing」展を見る。この建物は、宇野自身が設計したものであり、内部をジグザグに階段が貫き、立体街路を歩くような雰囲気だ。また2、3階の壁面が外にはりだし、下に向けて大きな開口をとるために、前面道路と密なコミュニケーションを生む。展覧会は、ガルウィングハウスから現在進行形の公共プロジェクトまでの作品の軌跡をたどる。単体の建築でも自律したものと考えるのではなく、無限に続く全体の一部として構想し、ユニットの展開可能性を意識したデザインへの一貫した関心が、展覧会の形式だからこそ明快に伝わる。

展示風景


2014/11/09(日)(五十嵐太郎)

インベカヲリ★「始まりに向けての青」

会期:2014/10/29~2014/11/10

ABG(AMERICA-BASHI GALLERY)[東京都]

2013年刊行の「やっぱ月帰るわ、私。」(赤々舎)で、目覚ましい成果を披露したインベカヲリ★が、新作13点を発表した。といっても、身近な女性モデルたちがそれぞれの思いを吐露するようなパフォーマンスを展開し、インベがそれを記録していくという作品のスタイルは前作をそのまま踏襲している。展覧会のタイトルが示すように、今回は次の「始まりに向けて」の助走という意味合いが強いのではないだろうか。
今回、彼女の作品を見てあらためて感じたのは、被写体となる女性たちのバックグラウンド、そして彼女たちがなぜそのようなパフォーマンスをしているのかが、写真を見ているだけではなかなか伝わりにくいということだ。1点1点の作品には、タイトルがついているのだが、ややひねりを効かせたものが多く、やはりそのあたりクリアーには見えてこない。たとえば、今回の展示作品の中に「詩集からはじまる」というタイトルがついた、ゴミが一面にちらばっている部屋の中でポーズをとる少女の写真がある。そのタイトルの背景には、詩人だった祖父が祖母に詩集を送ったことから、バラバラになっていた一家が再会したという物語が隠されているようだ。
つまり、それぞれの写真に思いがけないストーリーが付随しているわけで、むしろそれらを明るみに出していった方がいいのではないかとも思った。写真とテキスト(むしろ小説に近い)をうまく組み合わせていくと、何か次の展開が見えてくるのではないだろうか。

2014/11/10(月)(飯沢耕太郎)

Boundary Window / 躯体の窓

[千葉県]

津田沼にて、若手建築家の増田信吾+大坪克亘が設計した《躯体の窓》(2014)を見学する。最大の特徴は、建物よりも窓が大きいことだが、外構やインテリアにこだわりをもち、自分である程度の施工も出てきてしまう施主とのやりとりから、奥行きはないが、窓という「敷地」を発見し、そこから空間を構成したものだ。また集合住宅のリノベーションだからこそ起きる不思議なデザインが随所に発生する。さらに、カメラマンの施主によるハウス・スタジオがかもしだすロマンティックな雰囲気が融合し、夢のような空間がつくられた。

2014/11/10(月)(五十嵐太郎)

ウチミチニワマチ

[東京都]

神楽坂にて、増田住吾+大坪克亘の《ウチミチニワマチ》(2009)を訪れた。住宅の閉じたブロック塀を屈曲するエキスパンドメタルに変えたものだが、躯体の窓と同様、いわば既存家屋に対する一種のリノベーションであり、塀という特殊な部分だけをデザインし、建築を拡張しつつ、内部と外部の境界を懐のある空間として再定義する。

2014/11/10(月)(五十嵐太郎)

2014年12月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ