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2015年10月15日号のレビュー/プレビュー

阪本トクロウ──中空

会期:2015/08/29~2015/09/26

ギャラリーMoMoプロジェクツ[東京都]

湖や空(雲)、郊外のような風景などを描いてるのだが、フラットで少しグレーがかった深みがない色彩は日本画科出身だからか。建物、電信柱、夜景など人の痕跡はあっても人間はまったく出てこないせいか、冷たい印象を与える。カナダやフィンランドのような地面と湖水が複雑に入り組んだ図形や、ひびの入ったコンクリート壁など、とても惹かれるイメージがある。

2015/09/02(水)(村田真)

ヴォルフガング・ティルマンス Your Body is Yours

会期:2015/07/25~2015/09/23

国立国際美術館[大阪府]

大阪の国立国際美術館へ。ティルマンス展は、部屋ごとにテーマを設定し、さまざまなサイズの写真を分散的に並べ(しかもピン、クリップ、テープなどを使う、ラフな設置の方法)、それがポツ窓のように見えるので建築空間の中にいるような感じだった。彼は、あらゆるイメージとその表層を狩猟するが、今回は日本の時事問題を扱う台置きの展示もあって、意外な側面もうかがえる。

2015/09/02(水)(五十嵐太郎)

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ホーボーズ・ソング HOBO’S SONG ~スナフキンの手紙Neo~

会期:2015/08/25~2015/09/27

東京芸術劇場シアターウエスト[東京都]

作・演出、鴻上尚史「スナフキンの手紙 NEO」@東京芸術劇場。冒頭は能天気なビーチの描写から始まるが、一転していきなり日本が内戦状態に突入するという展開で物語が進行する。イラク侵攻から歴史が変わり、右的な日本軍と左的な新日本軍に分裂し、前者は後者をテロリスト呼ばわりし、自爆攻撃も厭わない。正義、天皇、笑いのテーマが交錯する意欲作だった。

2015/09/02(水)(五十嵐太郎)

映画『さよなら人類』トークショー

会期:2015/09/02

YEBISU GARDEN CINEMA[東京都]

ロイ・アンダーソン『さよなら、人類』のトークに登壇。マットペイントの木村俊幸と。この映画は、徹底的にスタジオのセットをつくり込んでおり、トーマス・デマンドの作品のなかで、映画を撮影しているような雰囲気である。また、斜めの角度からの室内描写や、緻密に構築された奥の見える開口も面白い。そして、トボケた間合いが生じる独特な間と設定による笑いが絶えない、ワンカットの短編を数珠つなぎにしたような作品である。映画の古くて新しい感じは、もしかすると映画以前の19世紀におけるパノラマ的な視覚にも通じるかもしれない。ほかにジョージ・シーゲルの人間彫刻、ヴィルヘルム・ハンマースホイの室内画なども想起させる。

2015/09/02(水)(五十嵐太郎)

デジタル×ファッション──二進法からアンリアレイジ、ソマルタまで

会期:2015/07/11~2015/10/06

神戸ファッション美術館[兵庫県]

最新テクノロジーを用いた服飾作りを行なうアンリアレイジ(森永邦彦)とソマルタ(廣川玉枝)、2人のデザイナーの仕事を紹介する企画展。
森永が2003年に設立したアンリアレイジは、衣服の形態や色、柄などの造形的要素に着目し、コレクション毎に、二次元と三次元の往還やズレ、テクノロジーを援用した色や柄の可変性など、既成概念への問い直しを行なってきた。例えば、標準的な人型のマネキンではなく、球体、三角錐、立方体といった幾何学形態に合わせてシャツやトレンチコートを形づくった《〇△□》、カラフルな柄を低解像度に下げることでピクセル化して表現した《LOW》。また、《COLOR》は一見、白いシンプルな服だが、太陽光に当たると色や柄が目まぐるしく変化する。紫外線に反応して分子構造を変える特殊な分子「フォトクロミック分子」が用いられている。《SHADOW》はこの技術を応用し、白い生地に光を当てると、その部分だけが影のように黒く変わるため、ステンシルの型紙のように模様を切り抜いた紙を重ねたり、プログラミングされたレーザー光を当てることで、自在に柄を描くことができるというものだ。
一方、廣川が2006年に立ち上げたソマルタは、代表作の《Skin》シリーズを、製作工程とともに展示しており、ため息が出るほど緻密で繊細な作品がテクノロジーに支えられて実現していることがよくわかる。《Skin》シリーズは、360°人体に合わせて模様を配置し、身体を包み込むように無縫製の編み機でつくられた、まさに「第二の皮膚」としての衣服である。繊細なレースやトライバルなタトゥーを思わせる美しく複雑な模様が全身を包み込み、箔や刺繍、ビーズやクリスタルガラスなどの手仕事がさらに加えられている。製作工程の展示では、図柄を全身に配置した図案データと、無縫製編み機に入力するために、編み目のバランスや着用時の伸縮などを計算して白黒のビットマップに変換されたデータが展示され、デジタル技術と繊細な手仕事の共存が美を生み出していることがわかる。
古来より、衣服は身体を保護する物理的存在であると同時に、「装飾」という機能を有する記号的側面を合わせ持つ。また、タトゥーにおいては皮膚そのものが意匠を表現する支持体となる。《Skin》シリーズを見た時、ギュスターヴ・モローの描いた「入れ墨のサロメ」を直感的に思い出したが、皮膚=衣服=装飾の一体化が《Skin》シリーズの核といえる。
また、服飾デザインに加えて、同様の繊細な模様の無縫製ニットをソファの布張りに用いた《Skin+Bone Chair》、骨格を元にした有機的なパーツに外装を覆われたクルマ《LEXUS DRESS》も合わせて展示された。プロダクトデザインという、一見、異なる分野の仕事に見えるが、皮膚と衣服のあいだの空間を限りなく圧縮し、衣服=皮膚の延長という考えをさらに推し進めれば、身体表面に直接触れる家具や閉じた個室空間としてのクルマも、身体の延長したものとして捉えられ、有機的な人体と家具や機械の融合としてビジュアライズされるのだろう。


左:ANREALAGE 2011-12 A/W COLLECTION「LOW」 株式会社アンリアレイジ蔵

右:SOMARTA「Skin "Robin"」2006 (c) SOMA DESIGN SOMA DESIGN蔵

2015/09/03(木)(高嶋慈)

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2015年10月15日号の
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