artscapeレビュー
2015年10月15日号のレビュー/プレビュー
石上純也《神奈川工科大学KAIT工房》
[神奈川県]
竣工:2008年
続いて、石上純也のKAIT工房へ。これで三回目の訪問だったが、かなり使い込まれながらも、森のように柱が林立する建築のアイデンティティを維持していることを確認する。その背後には囲いがあるものの、次のプロジェクトは着工前の状況だった。
2015/09/04(金)(五十嵐太郎)
高橋晶子+高橋寛/ワークステーション《横浜市仲町台地区センター》
[神奈川県]
竣工:1995年
次にワークステーションの横浜市仲町台地区センターへ。正面は木を囲む曲面ガラス、背後は高架のスケール感を意識したデザインになっている。カラフルな色づかいは、1990年代を思い出させる。仲町台では、横河健の事務所も訪問し、案内+ミニ・レクチャーをしていただく。極細の変形敷地ながら、隣接する緑道に対して開き、モダニズムを展開させた建築とランドスケープが一体になった空間を見事につくる。地下の工房はプロダクトや什器のデザインに活用する。そして、1階のレストランで、絶えず人が行き交う緑道を眺めながらランチを食べる。
写真:上=《横浜市仲町台地区センター》、中・下=横河健事務所
2015/09/04(金)(五十嵐太郎)
黄金町
[神奈川県]
続いて、黄金町を散策した。何度も訪れた場所だが、今回は仲原正治に案内していただいたおかげで、街の歴史や建築家やアートが関わった経緯を詳しく知ることができた。その後、アーティストの鎌田友介、建築家の加藤直樹を含む7組が、ストリップ劇場を改造した共同アトリエ・オフィスを訪問する。
写真:上=黄金町、下=鎌田らのアトリエ
2015/09/04(金)(五十嵐太郎)
飯田善彦《Archiship Library & Cafe(飯田善彦建築工房)》
[神奈川県]
竣工:2012年
吉田町の飯田善彦の事務所へ。1階がArchiship Library & Cafeとして、カフェと図書のスペースとして開放され、イベントなどを行なう。本人からは、3.11後にこうした場を始めた動機や活動について話を聞く。横河事務所とは別のかたちでの、まちに開く活動である。
2015/09/04(金)(五十嵐太郎)
伊賀美和子「THAT'S NOT ENOUGH.」
会期:2015/09/01~2015/10/03
BASE GALLERY[東京都]
伊賀美和子の人形を使ったホームドラマのシリーズは、ひそかに変容と脱皮を繰り返しているようだ。前回のBASE GALLERYでの個展「悲しき玩具--Open Secret」(2010年)から5年を経た今回の「THAT'S NOT ENOUGH.」では、お馴染みの人形たちのたたずまいが、少し変わってきているように感じた。
以前は、家庭の日常に形をとってくるさまざまなドラマを、人形たちが不器用に演じ直しているような印象があったのだが、そのような物語性が希薄になり、「生きることの小さな欠落」が露になる瞬間に、彼らが素っ気なく投げ出されているように見えてくる。首だけ、手だけ、脚の裏からといった場面は、それぞれ孤立していて、あまり相互のつながりを感じさせない。人形たちが不在の「Swan Lake」や、家具だけの写真もあって、そこでは旧作の「Madame Cucumber」の1シーンが、ひっそりと引用されていたりもする。
考えてみれば、伊賀が1999年に写真新世紀優秀賞を受賞してデビューしてからもう15年以上も経つわけで、彼女の分身ともいうべき人形たちも、それぞれの生の厚みを積み重ねてきているということなのだろう。奇妙なことに、人形たちの単純な、固定した顔つきに「深み」が生じてきているように見える。「THAT'S NOT ENOUGH.」というタイトルは、その変容のプロセスがこれから先もさらに続いていくことを示唆しているのではないだろうか。青っぽい色調の画面の中に佇み、漂っていく、人形たちの行方を見守っていく楽しみがより増してきた。
2015/09/05(土)(飯沢耕太郎)