artscapeレビュー

2009年01月15日号のレビュー/プレビュー

室井公美子 展

会期:12月2日~12月20日

ギャラリーMoMo[東京都]

絵具をぶちまけたり擦ったりした偶然性の高い絵画だが、いくつかの作品には歪んだダイヤモンドのような五角形が見られ、よく見ると、それ以外にも不定形ながら似たような形態が散見できる。岡崎乾二郎みたいな転写かと思ったら、デューラーの《メランコリア》からの翻案なのだそうだ。ほかにも彗星が見えていたり、具体的モチーフをよりどころにしていることがわかる。

2008/12/16(火)(村田真)

三瀬夏之介 展

会期:12月13日~12月27日

イムラアートギャラリー[京都府]

1月に東京の佐藤美術館で個展を行う三瀬が直前に京都で新作展を開催。まさかウォーミングアップでもなかろうが、多作の人らしいバイタリティが感じられる。新作は、無数のイメージが時空や遠近を超えて交錯する彼特有の画風は相変わらずだが、複数のピースを繋ぎ合わせる手法は用いられなかった(一部コラージュはあり)。インクジェットプリントによる写真画像が頻繁に用いられていたのも目新しい。また、屏風仕立てや、額装された大作があったのも新趣向だ。彼はまた新たな領域に向かおうとしているのか。

2008/12/16(火)(小吹隆文)

高橋耕平 個展 Take-A little action and small accident

会期:12月10日~12月21日

GALLERY RAKU[京都府]

薄型モニターに映し出された映像は、一見スチール写真のよう。しかし、じっと見続けていると、時折人物が動いたり、画面が微妙に手ぶれしていることに気付く。既成イメージに小さな仕掛けを施すことで、見る者の常識を編集し直すということか。でも、一旦気付くと、今度はそれ自体が既成イメージになってしまう。そこまで読み込むのが高橋の意図だと思われるが、いわゆる脳トレ的なサプライズで止まってしまう可能性も高い。かといってハードルを下げれば陳腐になるし。さじ加減が難しいところだ。

2008/12/16(火)(小吹隆文)

イデビアン・クルー・オム『大黒柱』

会期:2008/12/18~2008/12/20

川崎市アートセンターアルテリオ小劇場[神奈川県]

不意にけつまずくとか、井手茂太率いるイデビアン・クルーの魅力は、小振りな動きから生まれる不意打ちのリズムにある。舞台中央に屹立する巨大な「大黒柱」も、そんな一例で「なんだこれ!」とまず開演前に驚かされる。この柱を囲んで、男ばかり(全員30~40才代に見える)の6人が、建物を建造する職人たちや工務店の社員に扮し、労働とダンスを往復する。いくつもの小さな渦が瞬間的に生み出す大きな構造とか、「ガチムチ」で手足が短かいゆえに極端に素早い動きを見せる井手のスリリングなダンス、他ではあまり見かけない奇妙にエロティックでけだるい時間など、井手らしい見所は多い。ただ、男ばかりの舞台は男性性へのことさらな執着を引き出した分、そもそもの井手的不意打ちの生まれる条件であり、いつもはそこが焦点であるはずの(広義の)異文化接触は薄まっていた(肉体労働者と事務労働者の身体性の違いは、取り上げられていたけれど)。途中から柱が男根としか見えなくなったぼくは、舞台に描かれる中年男子の身体性やエロティシズムに、同年代のダンス集団コンドルズとかEXILEにはない豊かさを感じる一方で、ただ、「それ、見たい?」と自問すると答えに窮してしまうのだった。

2008/12/18(木)(木村覚)

本郷仁 展

会期:11月29日~12月27日

CAS[大阪府]

会場には3点の作品。ミラーボールのように吊るされたオブジェは凹面と凸面に六角形の鏡を敷き詰めたもの。壁面の作品は三角形の鏡をピラミッド状(四角錐)に配して規則正しく並べられている。もう1点は映像で、観客の姿がランダムに9分割されて映し出される。鏡の作品の前に立つと、自分の姿が千変万化に写り込み、ちょっとした異次元感覚。光学的現象にすぎないと言われればそれまでだが、思わぬ自分の姿を見せられたようでドキッとさせられる。

2008/12/18(木)(小吹隆文)

2009年01月15日号の
artscapeレビュー