2021年09月15日号
次回10月1日更新予定

artscapeレビュー

2009年01月15日号のレビュー/プレビュー

現代美術への視点──エモーショナル・ドローイング

会期:11月18日~12月21日

京都国立近代美術館[京都府]

そのものずばりのドローイングもあれば、これがドローイング? と首をかしげる作品もあった。映像(アニメ)が多いのは、次々と湧き上がる衝動を余さず留めたいという気持ちの表われなのか(映像作品を仕上げるプロセス自体はドローイングほど直感的ではないように思われるのだが)。恣意的でアバウトなドローイングというジャンル。でも、その曖昧さこそ大きな可能性の担保なのだろう。個人的にはホセ・レガスピの作品が一番気に入った。辻直之のも良かった。

2008/11/30(日)(小吹隆文)

松井沙都子 展 クロージング

会期:12月1日~12月20日

Gallery Den 58[大阪府]

細い線と薄い色彩で描かれた絵画作品。複数のイメージが複雑に接続されているため、いくら見つめてもイメージの整合性がとれない。追えば追うほど袋小路にはまり込むような、悶々とした感情が蓄積されていく。ほのかに隠微な香りが漂うのも刺激的だ。まるで百戦錬磨の異性に翻弄されるような、甘美と怖れが入り混じった気分。平日午後の画廊でこんな気持ちになるとは、思いもよらなかった。

2008/12/01(月)(小吹隆文)

秦まりの展 LOVE トカゲ男とその愛の話

会期:12月1日~12月6日

番画廊[大阪府]

恋人を亡くしたショックで半分トカゲになった男性が、愛の真理を求めて中南米に旅立つが……、という自作の物語によるカラフルな版画作品。表面に塗られたラメ(化粧品から流用)の効果で表面がキラキラしているが、ケバさよりも生命力を感じさせるのが彼女の長所だ。ぬいぐるみ状のソフトスカルプチュアもいい味を出していた。初個展なのに臆せず、伸び伸びと力を出し切っており、見ていて気持ちが良かった。

2008/12/01(月)(小吹隆文)

写真屋・寺山修司

会期:11月19日~2月28日

BLD GALLERY[東京都]

劇団・天井桟敷を率いて、1960~70年代の「アングラ文化」の旗手であった寺山修司は、写真にも異様なほどの執着を見せていた。1973年に「荒木経惟に弟子入り」した寺山は、モデルを公募して『幻想写真館 犬神家の人々』の撮影を開始する。74年に東京、京都などで展覧会を開催し、75年には同名の写真集(読売新聞社)も刊行されたこのシリーズ以後にも、寺山はハンブルグ、ロンドンなどでその続編を撮影し、78年には南仏アルルの国際写真フェスティバルに参加して公開ワークショップをおこなうなど、精力的に活動を続けた。本展は会期を二つに分け(第1期は2008年12月27日まで、第2期は1月9日から)、その多彩なイメージ世界を紹介している。
写真展のカタログも兼ねて出版された『写真屋・寺山修司』(フィルムアート社)に寄せた「寺山修司と写真」で、四方田犬彦は「日本映画史の中で寺山修司は落着きが悪い」と述べる。その言い方を借りれば「日本写真史の中でも寺山修司は落着きが悪い」ということになるだろう。彼の撮影の舞台はすべてキッチュな見世物小屋のような人工空間であり、そこではカメラは徹底して「真を写す」のではなく、「偽を作る」道具として駆使されている。また彼は、できあがった写真そのものよりも、撮り手とモデルとの関係を揺さぶり、エキサイトさせていく撮影行為の方に関心を寄せていたように見える。
荒木経惟、深瀬昌久、沢渡朔のような、同時代に「虚実皮膜」を行き来する作品を作り続けた写真家たちとの影響関係も含めて、「写真屋・寺山修司」の位置づけをもう一度考え直していく契機となる、刺激的な展覧会だった。

2008/12/02(火)(飯沢耕太郎)

藤井信子

会期:11月25日~12月4日

ジャックと豆の木[神奈川県]

昨年の芸大先端修了展で羽毛に覆われた巨大なお化けのような迫力のあるインスタレーションを発表した藤井信子。同じ作品を中心に、動物の皮や昆虫などを素材にしたいくつかの作品を展示した。地下の暗い室内で展示した昨年には気がつかなかったが、お化けの内側にはフラミンゴの羽毛が貼りつけられており、その鮮やかな紅色に内触覚が刺激された。

2008/12/03(水)(福住廉)

2009年01月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ