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2009年01月15日号のレビュー/プレビュー

石井弘和『地球防衛軍vs宇宙船地球号』

会期:12月1日~12月7日

フタバ画廊[東京都]

地球防衛軍と宇宙船地球号の闘争を描いた絵物語。ヘルメット姿の兵士たちはおのずとかつての学生運動を彷彿させるが、作者はまだ若者だった。未来的な想像力が過去の歴史に規定されていることを如実に物語っていた。

2008/12/04日(木)(福住廉)

ヴィルヘルム・ハンマースホイ展

会期:9月30日~12月7日

国立西洋美術館[東京都]

建築の側から見ても興味深い展示。特に面白いのは、象徴主義的な絵からスタートしたハンマースホイが、晩年のある時期から、ストランゲーゼ30番地にある彼の自宅をばかりを、ひたすら反復して描き出したところ。似たような構図の絵が何十枚もあり、半開きの扉やつねに後ろ姿で現われる妻イーダの姿、時にピアノや暖房器具などが挿入される。展覧会場では家の間取りも紹介され、どの場所でどの絵を描いたかがわかる。ただのリアリズムではなく、じつは家具やインテリアが作品によって変形したり、位置を変えている。。窓や開口部のモチーフを考えるのにも参考になりそうだ。

2008/12/04(木)(五十嵐太郎)

石内都 展──ひろしま/ヨコスカ

会期:11月15日~1月11日

目黒区美術館[東京都]

初期の《絶唱、横須賀ストーリー》《アパートメント》から、《1・9・4・7》《マザーズ》を経て《ひろしま》まで、石内の30年におよぶ主要なシリーズを通覧できる写真展。古びた建築に始まり、年老いたり傷ついた肉体、その肉体のいなくなった衣服へと被写体が移り変わっている。肉体を軸に「住」「衣」と来れば、次は「食」かというとそうはならないでしょうね。やはり数十年の時を蓄積させるものでなければ。そうか、数年でも数百年でもなく、自分が生きてきた、あるいは人間が生きられる数十年の「エイジング」を写し取っているのかも。カタログはほとんど偏執狂的。

2008/12/05(金)(村田真)

ファン・ホーホストラーテン《部屋履き》問い直された観る人の立場

会期:12月6日~5月16日

ルーヴル-DNPミュージアムラボ[東京都]

ルーヴル美術館から借りた作品を素材に、DNP(大日本印刷)のメディア技術を駆使して多角的に分析・解釈しようという「ミュージアムラボ」の5回目。今回の作品は、絵画の黄金時代といわれる17世紀オランダの画家ファン・ホーホストラーテンによる風俗画だ。もともとこの作品は遠近法に基づき、多層的な空間構造を描き出しているので「科学的」分析には向いている。そのうえ、タイトルにもなった部屋履きをはじめ、ほうき、鍵、画中画などのモチーフが作品に物語的な奥行きを与えているため、「文学的」解釈の余地も十分にあるのだ。素材がよければ料理はシンプルなほうがいい。

2008/12/05(金)(村田真)

新国誠一の《具体詩》 詩と美術のあいだに

会期:12月6日~3月22日

国立国際美術館[大阪府]

詩については無知なので、新国誠一のことも全然知らなかった。視覚詩や音声詩といった前衛的な作風で知られる彼の世界は、まるで文学と音楽と美術の中間点に位置するかのよう。前衛芸術華やかな時代のスピリットが、今も生々しく息づいている。それにしても、あまりに渋すぎる、この企画。詩人でもある建畠晢館長がいなければ、決し
て実現しなかっただろう。

2008/12/06(土)(小吹隆文)

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