2021年04月15日号
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artscapeレビュー

山部泰司 展「溢れる風景画 2014」

2015年01月15日号

会期:2014/12/16~2014/12/28

LADS GALLERY[大阪府]

山部泰司が近年手掛けている絵画作品が実に興味深い。それは、洪水に襲われた森林を描いたものだ。なぜ興味深いのか。洪水が東日本大震災の津波を連想させるからではない。作品に用いられている空間表現が非常にユニークだからだ。このシリーズでは一点透視などの西洋絵画的な遠近法ではなく、下から上に行くほど遠景となる積み上げ遠近法が採用されている(ように見える)。しかし、描かれた樹木の大きさはまちまちで、絵画空間の中にいくつもの遠近がランダムに存在している。まるで遠景と近景を無秩序にパッチワークして、全体としてなんとなく積み上げ遠近法らしくまとめたかのようだ。また、本作は最初の段階では複数の色彩による抽象的な線描から始まり、白地で塗りつぶしては描く行為を幾度も繰り返しながら徐々に構図が固まっていく。その過程がハーフトーンの白地を透かして垣間見えることにより、図柄の変遷や時間の堆積というもうひとつの奥行きも表現されているのだ。イメージはすべて赤茶か藍色系の線描で表現されており、西洋古典絵画の手稿を連想させる点も想像力を喚起させられる。本展では、200号×2の大作1点(画像)、200号の大作2点を含む36点が出品された。この精力的な作品点数も、いまの彼の充実ぶりを物語っている。

2014/12/20(土)(小吹隆文)

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