artscapeレビュー
「ジャン・フォートリエ」展
2015年01月15日号
会期:2014/09/27~2014/12/07
国立国際美術館[大阪府]
戦後のヨーロッパで興った前衛芸術運動「アンフォルメル」の作家として知られるジャン・フォートリエ(1898-1964)の没後50年を記念し、日本で初めての回顧展が開かれた。油絵と彫刻を含む116点が、時系列に三つの構成のもとに展示された。第1章は、「レアリスムから厚塗りへ(1922-1938)」と題され、《管理人の肖像》のような写実的な作品から始まって暗い色彩を用いた抽象的表現の作品へと変化してゆく画風を見ることができる。第2章は「厚塗りから『人質』へ」(1938-1945)」で、厚く塗り重ねられた独特の絵肌をもつ静物画から、戦時下を反映した画題の連作《人質》までが扱われる。ほかの展示室と打って変わって暗い室内に浮かび上がる、マチエールの顕わな「人質」たちの頭部を表わした作品群は、観る者の眼だけでなく触覚をも刺激する。変わって第3章では「第二次世界大戦後(1945-1964)」をテーマとして、《黒の青》のような、軽やかな抽象の世界が繰り広げられる。見どころの代表作《人質》だけでなく、全仕事を通覧することで、フォートリエの抽象表現をより深く理解・堪能できる展覧会だった。[竹内有子]
2014/12/03(水)(SYNK)