2021年04月15日号
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artscapeレビュー

小林秀雄「SHIELD」

2015年01月15日号

会期:2014/12/05~2015/01/31

EMON PHOTO GALLERY[東京都]

小林秀雄が1998年に発表した「中断された場所」は印象深いシリーズだった。公園やゴミ捨て場のような日常的な場所を可動式のコンクリートの壁で遮蔽し、地下室を思わせる空間を構築して撮影する。それは「ドキュメンタリーを架空の日常空間に再構築する」という意図を、高度な技術と美意識で実現した作品で、強い印象を与えるものだった。その小林は2000年代に入って活動がやや鈍り、しばらく沈黙を守っていた。今回のEMON PHOTO GALLERYでの個展は、2003年の「trace」(ツァイト・フォト・サロン)以来のひさびさの作品発表になる。
展示されたのは「SHIELD」(2013年)と「Falling Light」(2011年)の2作品。それぞれ「シャッターを開放した状態に保ち、自らフレームの中に入ってコンパスに似た装置を使い、私は光のシールドをゆっくり描いていく」(「SHIELD」)、「水面に水を垂らすように、数千のストロボ発光を長時間露光で8×10フィルムに刻む」(「Falling Light」)というコンセプトで制作されたシリーズだ。小林の徹底したメタフィジカルな思考と完璧な技術を融合させた作品群は、日本人の写真表現の系譜においてはきわめて希少なものであり、もっと高く評価されてよいのではないだろうか。見慣れた風景を「非日常空間に転化」するという果敢な実験の積み上げが今後どんな風に展開していくのか、さらにもう一段の加速があるのかが楽しみになってきた。

2014/12/06(土)(飯沢耕太郎)

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