artscapeレビュー

高松次郎ミステリーズ

2015年01月15日号

会期:2014/12/02~2014/11/22

東京国立近代美術館[東京都]

高松次郎がイジられてる。タイトルからして高松らしくないし。導入はだれでもわかる「影」シリーズから。子どもの影を二重に描いた《No.273(影)》や、立てかけた板の裏から光を当てた《光と影》などの後に、観客が自分の影で遊んだり写真を撮ったりできる「影ラボ」が続く。まだ序盤なのに、ここまで遊ぶか。仮設壁を取っ払った大きな展示室には、60年代の「点」「遠近法」シリーズ、70年代の「単体」「複合体」シリーズ、そして98年の死まで続く絵画が一堂に並べられ、中央に設えた高松のアトリエと同じサイズ(意外と小さい)の物見台からすべてを見渡せる仕掛け。なるほど、こうして見ると、あれこれ手を替え品を替えやってきた仕事が「点」ではなく「線」で結ばれることが了解できるのだ。高松次郎の「ミステリーズ」を解きほぐす試みと見ることもできる。さすが、イジリがいのあるアーティストだ。ただ残念なのは、作品が60-70年代に偏りすぎて、80-90年代を費やした絵画がきわめて手薄なこと。もちろん現代美術への貢献度からすればこれで「正解」かもしれないが、しかしそんなに高松の絵画はイジリがいがないのか。

2014/12/01(月)(村田真)

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