artscapeレビュー
シェル美術賞展2014
2015年01月15日号
会期:2014/12/10~2014/12/23
国立新美術館[東京都]
絵画を対象とする若手作家の発掘を目的とした公募展で、815点の応募作品のなかから52点の入選作品を展示している。15倍強の倍率を勝ち抜いたとはいえピンからキリまであり、しかもキリが多くてピンがほとんど見当たらず、絵画というものが一朝一夕では描けないものだということが再認識される。人物の頭上から木の枝が生えたような田淵麻那の《観葉植物A》は、色彩といい構成といい完成度が高い。これは保坂健二朗審査員賞。ビルの壁の「ル」の字のみクローズアップした大岩雄典の《ル》は、なぜ板に描いてるのかわからないけれど、クリーム色の地に青灰色が美しい。二股に分かれた木の幹のあいだから家族が笑顔を見せる黒木南々子の《華の家系図》は、わざわざ一人ひとり薄い板に描いたものを貼っている。むしろこうした一見無邪気に見える作品に絵画の別の可能性を感じてしまう。奥の部屋では過去に選ばれた作家によるセレクション展を開催。こちらはひとり数点ずつ出品していることもあって見ごたえがある。今井麗は日常的な食卓と人形をサラリと描いて気分がいいし、松尾勘太はできそこないのシュルレアリスムみたいで妙な魅力がある。一方、マンガチックな聖人に金の装飾を施した森洋史と、パイプや金網、噴煙などを描き込んだ吉田晋之介は、それぞれ背景と前面に津波や原発事故を出している。津波・原発はモチーフとして使いやすいし、免罪符にもなりかねないので取り扱い注意だ。ところで、毎年のことだが、会場には英語の作品リストはあるのに日本語のはない(なぜかセレクション展は日本語のリストがある)。以前なぜなのかたずねたら、日本語のリストはカタログに載ってるからということだったが、1000円は大金だ。とても手が出ない。再考を望む。
2014/12/12(金)(村田真)