artscapeレビュー
《エイモン・カーター美術館》、《フォートワース・コミュニティ・アーツ・センター》、《フォートワース科学歴史博物館》
2015年01月15日号
[アメリカ合衆国テキサス州]
エイモン・カーター美術館(1961)へ。ここの手前のテラスから、キンベル美術館やフォートワースの街を一望できる。フィリップ・ジョンソンが設計したモダンだけど、古典風味の建築で、リンカーンセンターのデザインに近い。が、最大の特色は、テキサスのシェルストーンによる壁・柱・天井だろう。近づいて見るとよくわかるのだが、ぎっしりと貝殻の跡がある石のテクスチャーは驚くべき存在感だ。アメリカの芸術を紹介する美術館だが、オキーフ、ハドソン・リバー派、レミントンとラッセル、ちょうど企画展をしていたジョージ・ビンガムなど、西部の方に焦点をあてる。キンベルと同じく、ここも無料だ。日本も企業や財団などによる私立美術館は少なくないが、高い入場料のものばかりである。
《フォートワース・コミュニティ・アーツ・センター》(1954)は、バウハウスのヘルベルト・バイヤーによって設計された。彼はグラフィック・デザインで有名だったが、建築も手がけていたとはあまり知らなかった。いわゆるモダニズムだが、地元の建築による同じテイストの増築がなされている。安藤建築が新しくできるまでは、フォートワース近代美術館はここにあったようだ。
さらに隣の《フォートワース科学歴史博物館》(2009)は、レゴレッタの設計である。メキシコ色が強いこの地ならではのセレクションだろう。目がさめるような鮮やかな色の組み合わせで、空間を構成し、バラカン風の中庭や、カーン風(?)の連続ヴォールト天井を組み込む。科学の展示は、わかりやすく楽しい。エントランスの吹抜けでは、911の世界貿易センタービルの残骸である焼けた鉄骨を展示している。
またその隣の《カウガール博物館》(2002)と《殿堂》(2002)は、一見昔のテキサス・デコ風だが、近くの博覧会のときにつくられたアールデコ建築、ウィルロジャース・メモリアルセンターへのオマージュであり、2002年竣工の新築だった。展示を見て、アメリカの映画におけるカウガールの表象の研究をやったら面白そうと思う。
2014/12/28(日)(五十嵐太郎)