2021年04月15日号
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artscapeレビュー

うた・ものがたりのデザイン─日本工芸にみる「優雅」の伝統

2015年01月15日号

会期:2014/10/28~2014/12/07

大阪市立美術館[大阪府]

平安時代より日本の美術工芸は、源氏物語や伊勢物語、詩歌、謡曲などの文芸と密接に関わりながら多様なデザインをうみだしてきた。今展は小袖、蒔絵、料紙装飾、硯箱、刀の鞘、陶磁器など、平安時代から江戸時代までの作品約140点によって、工芸意匠と文芸との関係を探ろうというもので、国宝や重要文化財の作品も多数展示された。会場は序章「王朝のデザイン 葦手と歌絵」、第一章「和漢朗詠集のデザイン」、第二章「和歌のデザイン」、第三章「物語のデザイン」、第四章「謡曲のデザイン」の5章からなる展示構成。息をのむほど精緻な表現技術の蒔絵手箱、源氏物語の場面を表すさまざまな風物を刺繍した着物など、華麗な展示品の数々には目を奪われっぱなしだったのだが、なかでも私が惹かれたのは国宝の《葦手絵和漢朗詠集(あしでえわかんろうえいしゅう)下巻》をはじめとする「葦手」の展示だった。平安時代に流行したという「葦手」は文字を絵画化した装飾文様。物語世界の意味を伝え、謎ときのヒントとしての「語り手」でもある。詩歌の音や文字のリズムと絡みながら、植物や鳥、水といった風物のモチーフが入り混じり、流れるようにゆるやかなイメージで読み手を物語世界に誘う。知識のない私には解説がなければ何が書いてあるのかもわからないのが残念だが、遊び心に溢れた優美な造形センスとその想像力に、物語世界を思い描く作者の心を垣間見るようだった。ボリュームもさることながら全体的に素晴らしい内容だった本展。会場もわりと空いていてゆっくりと鑑賞することができたのも嬉しい。

2014/12/06(土)(酒井千穂)

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