2021年04月15日号
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artscapeレビュー

辻田美穂子「カーチャへの旅」/藤倉翼「ネオンサイン」

2015年01月15日号

会期:2014/12/05~2015/12/10

AMS写真館[京都府]

2014年8月に第30回東川町国際写真フェスティバルの一環として開催された赤レンガ公開ポートフォリオオーディションの準グランプリ受賞者、辻田美穂子と藤倉翼の展覧会が、京都・二条のAMS写真館で開催された(グランプリ受賞者のエレナ・トゥタッチコワ「林檎が木から落ちるとき、音が生まれる」は既に2014年10月~11月に東京・東銀座のArt Gallery M84で開催)。多彩な傾向の作品が応募されるポートフォリオオーディションの受賞者にふさわしく、まったく対照的な展示になったが、それぞれ受賞時よりもレベルアップした、質の高い作品を見ることができた。
1988年、大阪生まれの辻田は、祖母が第二次世界大戦前から戦後にかけて暮らしていた南樺太の恵須取(エストル)を2010年から6回にわたって訪れ、その記憶をたどり直そうとした。「カーチャ」というのは病院に勤めていた祖母が、ロシア人たちから呼ばれていた名前だという。最初は祖母と一緒に、墓参団の一員として樺太に渡ったのだが、その後は現地に知り合いもでき、一人で行くようになった。そのことで「カーチャへの旅」から「自分にとっての旅」へと、旅のあり方が変わってきた。そのことは作品にも反映されていて、物語的な要素の強かった写真の選択・構成が、1枚1枚のイメージの強さを強調する方向に傾きつつある。まだ着地点がどうなるかは見えていないが、従来のドキュメンタリーの枠にはおさまりきれない作品として成長しつつあるように思える。
一方、1977年、北海道北広島市出身(札幌在住)の藤倉の作品は、札幌、東京、大阪、神戸などの「昭和の匂いがする」ネオンサインを、正面から写しとり、背景をカットして浮かび上がらせたシリーズである。ネオン職人の工芸品を思わせる技巧の冴えとともに、ネオンサインそのものの光のオブジェとしての魅力に、強く魅せられているのだという。今回はあえて和紙にプリントすることで、記号として見過ごされがちなネオンサインの繊細な美しさを強調している。撮影したものの中に、既に撤去されてしまったものも数多くあるということなので、他の都市にも足を運び「日本のネオンサイン」の様式美を、ぜひ集大成して完成させてほしいものだ。

2014/12/05(金)(飯沢耕太郎)

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