artscapeレビュー

HAKKA

2015年01月15日号

会期:2014/12/04~2014/12/09

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

なにも知らずに入った。絵も数点あるが、大半が写真の展示。聞いたことある名前は鷹野隆大と蔵真墨くらいで、あとは30歳前後の人たちが多い。どういうグループか知らないが、レベルは一定以上だ。たまたまその場にいた山岸剛の作品について述べると、暗い画面を上下に二分する白い水平線の入った写真と、上下に2、3段の層をなす白っぽい写真の2点を並べている。黒っぽい画面のほうは右上に薄明の空、左下に植物らしきものが写っているので風景写真とわかるが、中央の水平線が不明。2枚の風景を上下に合わせたようにも見えるが、そうでもないようだ。一方、白っぽい写真のほうは雪景色とわかるが、川と雪の積もった岸との境があまりにくっきり分かれていて、これも2枚の風景の組み合わせかと思えてくる。作者によれば、どちらもストレート写真で、前者の白い水平線は夜ヘッドライトをつけて走る車を長時間露光で撮ったため、白い軌跡になったそうだ。2点とも石巻市を流れる北上川下流をほぼ同じ位置から撮ったものだという。さて、ここで引っかかったのは、なんで震災とも津波とも関係のない主題を撮るためにわざわざ石巻まで行ったかということ。つい最近まで、被災地を作品に採り込めば社会的に認められると勘違いしている人が多いんじゃないかと疑っていたからだが、しかし、たとえ場所探しのためだけでも被災地を訪れるのはけっして無駄なことではない、とも思い始めた。

2014/12/05(金)(村田真)

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