2019年06月15日号
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artscapeレビュー

佐治嘉隆「時層の断片─Fragments from the Layers of Time─」

2015年01月15日号

会期:2014/12/15~2014/12/20

ESPACE BIBLIO[東京都]

佐治嘉隆は1946年、愛知県生まれ。1968年に桑沢デザイン研究所写真専攻科を卒業している。同じクラスに牛腸茂雄、関口正夫、三浦和人がいた。牛腸とは後に、ギャラクシーというデザイン会社を共同運営したこともある。
この経歴を見てもわかる通り、日々スナップショットを撮影するという「構え」は若い頃にしっかりとでき上がっており、揺るぎないものがある。だが、今回東京・御茶の水のブックカフェ、ESPACE BIBLIOで開催された個展「時層の断片」を見ると、2005年からデジタルカメラでの撮影を開始し、06年からブログで作品を発表しはじめてから、その写真のスタイルが微妙に変わってきたようだ。単純に撮る量が増えただけではなく、被写体にぱっと反応する速度が早くなり、より軽やかな雰囲気が出てきている。彼のようなベテランの写真家が新たな領域にチャレンジしているのは、とても素晴らしいと思う。「時層」というタイトルは、あまり馴染みのある言葉ではないが、佐治の写真のあり方をとてもうまく捉えているのではないだろうか。シャッターを切る瞬間の、時空の広がり、偶然の形、光や影の移ろい、色の滲みなどが、地層のように積み重なり、柔らかに伸び縮みしながら連なっていく。気持ちよく目に飛び込んでくるイメージの流れを、A3サイズのプリント37点による展示で、心地よく楽しむことができた。
なお展覧会にあわせて、島尾伸三らとともに企画・刊行しているeyesight seriesの9冊目として、同名の写真集が出版されている。デザイン・レイアウトは佐治本人によるもので、2005~2013年撮影の写真が時系列に沿って144点並ぶ。より幅の広い写真群がおさめられて、奥行きを増した写真集の、展覧会のシンプルなたたずまいとの違いが興味深い。

2014/12/18(木)(飯沢耕太郎)

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