artscapeレビュー
「福島写真美術館プロジェクト 成果展/福島」
2015年01月15日号
会期:2014/12/06~2015/12/21
キッチンガーデン2&3F[福島県]
2012年から福島県立博物館と同県内の各団体が連携して展開している「はま・なか・あいづ文化連携プロジェクト」の一環としておこなわれているのが「福島写真美術館プロジェクト」。写真家やアーティストが、福島県内で作品を制作して発表するというもので、今回はその第2回目の「成果展」が福島市栄町のキッチンガーデン内のスペースを使って開催された。
今回発表されたのは、華道家の片桐功敦の「南相馬環境記録プロジェクト」、ニューヨーク在住のアーティスト、安田佐智種の「南相馬住まいの記憶プロジェクト」、写真家の赤阪友昭の「福島環境記録プロジェクト」、写真家の本郷毅史の「福島の水源をたどるプロジェクト」の4作品だった。福島第一原発の「20キロ圏内」に咲く花を器に生けたり、風景の中に配置して撮影する片桐、津波で流された家々の土台部分を撮影した画像を繋ぎ合わせて再構成する安田、震災後の自然環境の変化を克明に撮影し続ける赤阪、福島を代表する河川、阿武隈川の源流をたどる本郷の4作品とも、長い時間をかけた労作であり、そのクオリティもとても高い。このプロジェクトが、「震災後の写真」のあり方を再考、更新していく重要な試みであることが、あらためて証明されたのではないだろうか。
なお12月20日には同会場で、筆者をモデレーターとして、出品作家の片桐、赤阪に加えて、郡山で花の写真を撮り続けている写真家の野口勝宏、立ち入り禁止区域に指定されていた原発敷地内と作業員の写真を発表したフォト・ジャーナリストの小原一真を交えて、「福島で撮る」と題するトークイベントが開催された。「福島写真美術館」というのは、まだ今回のプロジェクトに与えられた呼称に過ぎない。だが将来的には、福島及び東北地方の写真を蒐集、保存、展示する恒久的な施設としての「福島写真美術館」を、ぜひ実現するべきではないだろうか。その可能性を探っていく第一歩として、とても意義深いイベントだったのではないかと思う。
2014/12/20(土)(飯沢耕太郎)