artscapeレビュー

生誕100年 松本竣介 展

2013年01月15日号

会期:2012/11/23~2013/01/14

世田谷美術館[東京都]

36歳で早逝したから、しかも第2次大戦と敗戦後の混乱に翻弄された画家だから、広大な世田谷美術館の企画展示室を埋めるだけの作品があるのか疑問だった。ところが驚いたことに、2階の常設展示室まで使っての大回顧展ではないか。総作品点数240点以上、書簡やスケッチ帖などの資料も含めれば計400点を超す。でも絵としてはおもしろみを感じなかったなあ。いわゆる竣介らしさに、黒く細い線で輪郭を縁どる技法があるが、これって藤田嗣治の技法と似てなくね? 描くモチーフも戦争に対する画家のスタンスも対照的だったけど、両者はどこかで通底していたかも。もちろん藤田のほうが器用で繊細で振れ幅も大きく、サービス精神も旺盛なお調子者だったけど。もうひとつ奇妙に感じたのは、遠近法を使っているのに画面の奥行きや空間的な広がりが感じられず、閉じた感じがすること。とくに後期は人物があまり描かれてないからかもしれないが、画面を静寂感が支配しているように感じられるのだ。これは耳が聞こえなかったせいかしら。

2012/12/16(日)(村田真)

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