2021年11月15日号
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artscapeレビュー

この世界とわたしのどこか 日本の新進作家 vol.11

2013年01月15日号

会期:2012/12/08~2013/01/27

東京都写真美術館 2階展示室[東京都]

いつのまにか11回目を迎えていた「日本の新進作家」展。若手の、将来が期待される写真家の選抜展としての役目をしっかり果たすようになった。もうすでに評価の高い写真家だけでなく、今回でいえば大塚千野や菊池智子のように、あまりきちんと紹介されていなかった新しい顔に出会える楽しみがある。
「この世界とわたしのどこか」という曖昧模糊としたタイトルが暗示するように、テーマらしきものはあまりくっきりとは見えてこない。1970年代生まれの女性作家というのが唯一の共通項だが、現代日本の索漠とした状況を映し出す旅のスナップショット(蔵真墨)、ファッション誌の女性像を精密に写しとったドローイングを複写し魔術的な操作を加えた銀塩プリント(田口和奈)、海辺の光景の中に寄る辺なくたたずむ釣り人たちを撮影した作品群(笹岡啓子)、過去のアルバム写真に現在の自分の姿を合成した「ダブル・セルフポートレート」(大塚千野)、中国のトランス・ジェンダーの若者たちを2005年から撮影し続けたプライヴェート・ドキュメンタリー(菊池智子)と、彼らの展示作品は多方向に引き裂かれている。だが、それぞれ「この世界とわたし」との関係のあり方を、真摯に探求していこうとする志向においては重なりあう部分があるのではないかと思う。
大塚の「見ることのできない何か、そこにはない何かを撮ることによって、わたしは新たな表象、新たな記憶を創造する」、あるいは田口の「作品は私の既知をつねに越えていくものだし、私よりずっとさきにいって私にさえ示唆をあたえてくれる」といったコメントに、彼女たちの、未知の「どこか」に写真という杖を差し伸ばし、何ものかを探り当てようという意欲のみなぎりを感じる。個人的には、胸が震えるような切実さをたたえた菊池智子の写真と映像作品(「迷境」2012)に、強い感銘を受けた。

2012/12/14(金)(飯沢耕太郎)

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