2021年10月15日号
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artscapeレビュー

石塚元太良「氷河日記 グレイシャーベイ」

2013年01月15日号

会期:2012/12/06~2013/12/28

SLOPE GALLERY[東京都]

石塚元太良は2010年にシーカヤックでアラスカの湾岸を移動しながら、氷河を撮影するというプロジェクトを行なった。2011年には文化庁在外芸術家派遣員としてアメリカに滞在して、前に写真集(『PIPELINE ALASKA』2007)にまとめたアラスカの石油パイプラインのシリーズを撮影し直した。さらに2012年にはアイスランドにアーティスト・イン・レジデンスで滞在して、当地の地熱エネルギーを利用したお湯のパイプラインを撮影している。それ以前から世界中を飛び回る行動力には定評があったのだが、近年は移動の範囲がより広がるとともに、プロジェクトを着実に形にしていくことができるようになってきた。
本展では2010年7〜8月に、キャンプしながらアラスカ・グレイシャー湾をカヤックで回ったときの写真を展示している。35ミリカラーフィルムで撮影した、縦位置のスナップショット写真16点が中心だが、大判カメラで撮影した氷河の写真3点も、大きく引き伸ばして展示している。移動しつつ、軽やかに被写体を捉えていくスナップショットも悪くないが、光を透かして青く輝く氷河の表層をなぞるように写しとった写真に、石塚の写真家としての姿勢がしっかりと定まってきていることがうかがえた。いま制作中というアラスカとアイスランドの石油パイプラインのシリーズが、どんな形でまとまってくるのかが楽しみだ。1977年生まれの彼にとっては、写真を通じて歴史観、世界観が問われる正念場の時期を迎えつつあるのではないかと思う。
なお、展覧会にあわせて小ぶりなサイズの写真集『氷河日記 グレイシャーベイ』も刊行されている。自費出版の、手作り感が漂う写真集だが、逆に写真にもテキストにも自分の思い通りの形にしていこうという爽やかな意欲がみなぎっている。これまで彼が刊行してきた写真集のなかでも、一番いい出来栄えかもしれない。

2012/12/20(木)(飯沢耕太郎)

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