artscapeレビュー

TRANS ARTS TOKYO

2013年01月15日号

会期:2012/10/21~2012/11/25

旧東京電機大学11号館[東京都]

取り壊しが決定している大学校舎を会場にした大々的な展覧会。地下から地上17階まで、6階をのぞくすべてのフロアで300名以上のアーティストが作品を展示した。学生や若手アーティストが大半だとはいえ、これだけ大規模に催された展覧会は他に類例を見ない。すべて見るにはそうとうの時間と体力を要するほど、作品の数は、おびただしい。
展示された作品は、美術、建築、デザイン、ファッションなど多岐にわたっていたが、なかでも最も光っていたのは、14階。ディレクターの中村奈央が、13人のアーティストの作品を縦横無尽に展示した。建物の構造上、どの階も同じような展示空間にしがちだが、中村は教室から廊下、トイレまで14階の空間を余すことなく使い切ったところがすばらしい。壁面の一部に穴を開けて作品を見せたり(臼田知菜美)、経団連のビルが望める窓に「無職」と達筆で書いたり(キュンチョメ)、廊下の全面にスプレーで名前を書かせて芳名帳としたり(キュンチョメ)、破壊されることを前提とした空間の使い方が、他の階とは比較にならないほど、抜群にうまいのである。
若手アーティストの作品が一同に会した意義は大きい。しかし、それと同時に、それらをオーガナイズしたディレクターやコーディネーターの才覚も評価すべきではないだろうか。

2012/11/22(木)(福住廉)

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