artscapeレビュー
SPIDER-MAN TURN OFF THE DARK
2013年01月15日号
会期:2011/06/14
Foxwoods theatre[アメリカ、ニューヨーク]
『スパイダーマン』のミュージカルを観劇した。これは面白い。U2が楽曲に、石岡瑛子が衣装デザインに関わっているのはもちろんだが、出演者が文字どおりにスピード感のある空中戦を演じ、都市や空間を表現する舞台美術が凝りに凝っている。全編ガジェット満載で、呆れるを通り越して、驚き、楽しむしかない。
宙吊りの蜘蛛女を中心に、空中でスイングしながら女たちが黄色い帯を縦横に編む幻想的なオープニング。ライブのワイヤーアクションで、スパイダーマンが飛び、2、3階席にも着地し、観客の頭上でグリーン・ゴブリンと戦う。またマスクをかぶり顔を見せないことを逆手にとって、複数のスパイダーマンがスタンバイして、瞬間的に移動したように見せたり、あちこちから自在に登場するスピード感をつくりだしている。ここまで実際に飛びだす3Dで、高さのある演出はちょっと見たことがない。そして意図して漫画風につくられた舞台美術も興味深い。これだけ複雑な装置なら、怪我や事故、初期の上演でトラブルがあっても仕方ないだろう。舞台の手前がビルの屋上、奥が地上面になって、垂直軸を90度回転させるほか、左右に傾いたり、重心が転換する感覚は、まさに映画で見たスパイダーマンの動きだ。CG技術がもたらすダイナミックな表現が、現実の演劇と生身の俳優にフィードバックしたものと言える。
2012/12/30(日)(五十嵐太郎)