2021年10月15日号
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artscapeレビュー

川俣正 Expanded BankART

2013年01月15日号

会期:2012/11/09~2013/01/13

BankART Studio NYK[神奈川県]

川俣正の新作展。大規模な個展としては2008年に東京都現代美術館で催した「通路」展以来、じつに4年ぶりである。「通路」展が川俣以外の人びとによるさまざまなプロジェクトを発進させるためのカタパルトだったとすれば、本展は川俣本人の表現に焦点を絞った文字どおりの個展である。BankARTの巨大な空間で、無数の廃材を組み合わせたインスタレーションや記録映像などを発表した。
輸送用パレットを建造物の外壁に組み上げた作品は、圧巻の一言。1階から4階まで木材がうねるように立ち上がっている。何かの怪物が建物に寄生しているかのようだ。風景を一変させるほどのスペクタクルを信条としてきた川俣ならではの力強い作品である。
ただ、室内の作品を見ると、その印象を修正することを余儀なくされる。そこに組み立てられたインスタレーションの内側に入ると、いまも伝統行事としてつくられているかまくらや、圧雪したブロックで構成したイグルーにいるような不思議に安らかな感覚が生まれたからだ。外側はたくましく、内側はやさしい。川俣の作品には、その両面が畳み込まれた厚みがあることを如実に物語る展示だった。
かつて川俣正はポストもの派の一翼を担う新人として華々しくデビューしたが、いま改めて振り返ってみれば、かまくらやイグルーという共同体に根づいた限界芸術を欠落させた都市社会において、それらを人工的かつ想像的に再生しようとする、民俗学的な作品として位置づけ直すことができるのではないか。それは、民俗学による戦後美術史の再編へと広がるはずだ。

2012/12/12(水)(福住廉)

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