2021年10月15日号
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artscapeレビュー

須田一政「風姿花伝」

2013年01月15日号

BLD GALLERY[東京都]

会期:[第一期]2012年11月15日~12月2日/[第二期]2012年12月4日~28日
須田一政が1975~77年に『カメラ毎日』に断続的に掲載した「風姿花伝」は、僕にとって忘れがたいシリーズだ。この時期の『カメラ毎日』の誌面は名作ぞろいなのだが、須田の写真はとりわけ薄紙に水が染みとおっていくような浸透力を備えていた。そのただならぬ異界の気配に、震撼とさせられることも多かった。須田のこの時期の仕事については、近年ヨーロッパでも再評価の気運が高まっている。ベルリンのonly photographyから500部限定の写真集『ISSEI SUDA』も刊行された。その須田の代表作が、BLD GALLERYで展示され『風姿花伝[完全版]』(Akio Nagasawa Publishing)が刊行されるというのも、彼の再評価の大きな流れのなかに位置づけられるだろう。
今回の展示の目玉は、なんといっても1,080×1,080mmサイズの大判モノクロームプリント10点である。その迫力は比類ないものがあり、須田の写真の世界がしっかりとした構築的な骨組みを備えていることが、明確に浮かび上がってくる。ほかに名作中の名作、あの大蛇が壁をつたって這う「神奈川県三浦三崎」(1975)のヴァリエーション4枚(とぐろを巻く蛇のイメージも含む)が、初めてプリントとして展示されているのも興味深かった。この連作も写真集として刊行する予定だという。
なお、新宿のPlace Mでは、須田が1990年代に制作した「RUBBER」シリーズ(ポラロイド写真)が展示された(12月3日~9日)。こちらも彼の「なんかヘン」な対象に対するフェティッシュなこだわりが全面展開した怪作だ。Place Mから同名の写真集も刊行されている。

2012/12/04(火)(飯沢耕太郎)

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