artscapeレビュー
MAM PROJECT 018 山城知佳子
2013年01月15日号
会期:2012/11/17~2013/03/31
森美術館 ギャラリ─1[東京都]
沖縄出身の山城知佳子の映像や写真の作品は、以前からずっと気になっていた。沖縄独特の亀甲墓を舞台にした一連のパフォーマンスや、あの海の中を海藻とともに漂う「アーサ女」(2008)など、南島の母系社会の神話的想像力に根ざした注目すべき作品だと思う。今回は森美術館の新進アーティスト紹介企画の一環として、新作の三面スクリーンの映像作品「肉屋の女」が展示されていた。
「肉屋の女」はこれまでの山城の作品とは違って、物語性がかなり強く打ち出され、シナリオのある「映画」として見ても充分なほどの完成度に達している。海の中を漂う肉片を拾い集めて、米軍基地のフェンス近くのバラック小屋で売る女たちの世界と、その肉を争いながら奪い取って食べる男たちの世界とが交錯しつつ、鍾乳洞を舞台に沖縄の精神的な古層との交流を暗示するようなパフォーマンスが展開する映像作品の構造は、そう単純なものではない。それでも、山城自身をはじめとする沖縄在住の若者たちの開かれた身体のあり様が、気持ちよく目に飛び込んできて見応えがあった。それとともに「肉屋」という特異な空間設定が、とてもうまく効いていると思った。映像を見ているうちに、もしかするとこの肉は人肉なのではないかという、奥深いカニバリズム的な恐怖が引き出されてくるのだ。このテーマを深めていけば、さらにめざましい映像世界の展開が期待できそうだ。
2012/12/12(水)(飯沢耕太郎)