artscapeレビュー
2013年01月15日号のレビュー/プレビュー
カタログ&ブックス│2013年1月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
集落が育てる設計図 アフリカ・インドネシアの住まい
LIXILギャラリーで行なわれている「集落が育てる設計図–アフリカ・インドネシアの住まい」展のカタログ。本書では、50ヵ国500もの集落を実測記録してきたフィールドワークの中から、住居づくりの原点である「土」からなるアフリカと「木」からなるインドネシアのユニークな住まいを2本柱に、集落ごとの独自性と共通性を、味わいのある線描写の立体図面や平面図また写真を多用し、分かりやすく読み解いていく。調査リーダー・藤井明氏の丁寧な解説付きで、暮らしの原点に通じる英知と空間に潜む考察が繰り広げられる。調査に同行した元研究生らのインタビューも収録。建築家の目で行ってきたフィールドワークの成果を凝縮した一冊。
同展覧会は、2013年2月21日までLIXIL大阪ギャラリー、2013年3月6日〜5月25日にはギャラリー1(東京)にて行なわれる。
[LIXIL出版サイトより]
冥府の建築家 ジルベール・クラヴェル伝
幼少期の結核が元で宿痾をかかえたジルベールは、イタリア未来派の演劇活動として未来派演劇の監督、さらに「自殺協会」と題された幻想小説の作家であり、アヴァンギャルドにして、南イタリアはポジターノの岩礁を爆破し穿孔して建てた洞窟住居の建築家である。本書は、バーゼル、マッジャ、ローマ、ポジターノなど、スイスとイタリアの各地に分散した遺稿や資料を可能なかぎりすべて調査し、この知られざる特異な作家/建築家の生涯と妄執を辿り直した、世界でも初めての評伝である。
[書籍帯等より構成]
マグリット 光と闇に隠された素顔
日本人初のベルギー王立美術館公認解説者・森耕治氏による、マグリットの作品を新しい解釈で読み解いた作品解説書です。《光の帝国》《大家族》《ピレネーの城》といった日本でも有名な作品はもちろん、マグリットの人生を解き明かすうえでかかせないシュルレアリスム以前の作品や、これまで日本では画集に掲載されたことのない貴重な作品なども収録した、画集としても充実の1冊です。作品のほかに、当時のモノクロフィルムや、現在のマグリットゆかりの地の写真も豊富に掲載! “イメージの魔術師”の異名を持つマグリットが追い求めたもの。それが人類普遍の願いであることに、あなたもきっと驚くはずです。
[マール社サイトより]
TOKYO INTELLIGENT TRIP 02 TOKYO研究所紀行
最先端科学から宇宙研究、暮らしの最新技術まで実際に訪れて、見学できる研究所を集めました。ほんの少し先の未来を感じられる場所へ、小さな旅に出かけてみませんか。
「TOKYO図書館紀行」に続く、TOKYO INTELLIGENT TRIPシリーズ第2弾!!
好奇心が刺激される最新研究所を紹介します。福岡伸一、枝廣淳子書き下ろしエッセイ、べつやくれい研究所コミック、瀬名秀明、福江翼インタビューなども収録。
最新の研究を知ることができる、これまでになかった研究所ガイドです。
[玄光社特設サイトより]
7iP♯03 KOJI KAkiuchi
建築を完成させるまでの行程を丁寧に繙いていきました。
プロジェクトによって変化する建築家の考え方、 作り上げるための構造、設備、施工のアイデア。クライアントをはじめ、携わる人とのコミュニケーション… 1つのプロジェクトだけを特集した本。
1冊で1プロジェクト、シングル盤のような本をつくりました。
この目的のもとすすめられる7inchProjectの第3弾。100年前から建つ京都の町家を、垣内光司と素人である施主(作り手=住み手)が ゼロから作り上げていくプロセスを通して、DIYの社会性とその未来を探る。
[7inchiprojectサイトより]
TOKYO BOOK SCENE
読書体験をシェアする。新しい本の楽しみ方ガイド
本書は、“新しい読書体験のビギナー”に向け、東京近郊の「本を介したコミュニケーションの場」を紹介するブックカルチャーガイドです。気になる個性派本屋、おしゃれなブックカフェはもちろん、それぞれ課題図書を読んできて、感想を話し合う読書会、珍しい本との出会いに誘う古本市など…。
これまでは読書と言えば、個人で楽しむものでしたが、最近はSNSなどを通じて“みんなで本を楽しむ”新しい読書スタイルの提案などもしています。
本好きの方はもちろん、新しいブックカルチャーに触れてみたい方、知的な趣味を探している方などにも、ぜひ手にとっていただきたい一冊となっています。
[玄光社サイトより]
2013/01/15(火)(artscape編集部)
プレビュー:生誕130年 魯山人の宇宙
会期:2013/01/05~2013/02/03
明石市立文化博物館[兵庫県]
自ら料理長を務めた料亭「星岡茶寮」を開くなど、食を極めた芸術家として知られる北大路魯山人の個展。彼の作品は、書、篆刻、陶芸、漆芸、絵画など多岐にわたるが、今回は笠間日動美術館が所蔵する陶芸、絵画等の作品約80点が展示される。注目すべきは、アメリカ、サンディエゴから里帰りした「カワシマ・コレクション」が出品されることだ。同コレクションは、魯山人と交流し、彼の名をアメリカに知らしめたジャーナリスト、シドニー・カドーソ氏が収集した魯山人作品をもとに、収集家であるモーリス・河島氏が作り上げたコレクションで、知られざる名品を多数含む。「食器は料理のきもの」という魯山人自身の言葉が示すように、彼にとって、陶器とは料理が盛り付けられることを念頭につくられるものだった。独特の形態や図柄は、どのような料理を想定したものなのか、そんなことを想像しつつ、楽しみたい展覧会だ。[橋本啓子]
2013/01/15(火)(SYNK)
プレビュー:鈴木ユキオ『大人の絵本』
会期:2013/01/25~2013/01/28
象の鼻テラス[神奈川県]
初詣で半吉を引いた木村です。息子は大吉で、くじには「おごり高ぶり丸」なる帆船に乗って順風満帆という絵が描かれていました。息子の船に便乗して今年を乗りきりたいと思います。さて、1月のマストは、鈴木ユキオ企画の『大人の絵本』(2013年1月25日~28日@象の鼻テラス)です。トミー・ウンゲラーの絵本にインスパイアされた企画ということで、一部は鈴木ユキオ+金魚の新作(『断片・微分の堆積』)、二部はゲストを招いて『即興絵本』と称した即興公演──といった構成で展開される予定。ゲストが豪華で25日は黒田育世+松本じろ、26日はKATHY、27日は東野祥子+カジワラトシオ、28日は白井剛+Dillといったラインナップ。いまの日本の(コンテンポラリー? もうそう呼ぶのにはリアリティがないかも)ダンスの力を確認すること間違いなし。上演会場が象の鼻テラスというのもいい。極寒の真冬の海辺とはいえ、横浜のリラックスした雰囲気が存分に楽しめることだろう。
2013/01/15(火)(木村覚)
プレビュー:コレクション ウラがもれる
会期:2013/01/12~2013/03/03
伊丹市立美術館[兵庫県]
タイトルは、「日常のモノの裏側にぽっかりと空いた空間から何かが洩れ出てくるような。」という今村源の言葉より着想をえたものとされている。内と外、裏と表、光と影など、目に見える世界と背中合わせに存在し、切っても切れない関係にあるさまざまな“ウラ”をテーマに、コレクションのなかから想像世界へと見る者を誘う作品を紹介する。おもな出展作家は、今村源、土谷武、堀尾貞治、山田光、オノレ・ドーミエ、ニキ・ド・サンファール、ジャン・デュビュッフェ、ロルフ・ユリウスなど。1月19日(土)には今村源によるアーティストトークも開催される。
2013/01/15(火)(酒井千穂)