2020年07月01日号
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artscapeレビュー

荒木経惟「人妻ノ写真」

2014年01月15日号

会期:2013/11/08~2014/01/19

RAT HALL GALLERY[東京都]

荒木経惟が1998年から『週刊大衆』誌に連載している「アラーキー不倫写 人妻エロス」は、実にとんでもないシリーズへと化けつつあるのではないか。そのことを、まざまざと思い知らせてくれる展示だった。
会場には、下腹、太股をたぷたぷと波打たせ、陰毛をこれ見よがしに誇示し、染み、皺、妊娠線何でもありの、妙齢の女性たちのヌード写真がずらりと並んでいる。やや太めのモデルが多い、大伸ばしのプリント展示(20点)もよかったが、なんと言っても圧巻なのはキャビネサイズのプリントを縦24列、横21列、全部で504枚並べた「女体壁」だった。各プリントの一部には、赤、ピンク、青、緑、黄色などのペンで何やら危ない形状の物体を描いたドローイングが施されている。すべて日付入りのカメラで撮影しているということは、荒木はわざわざ「人妻エロス」の撮影現場に、日付を写し込む機能がついたコンパクトカメラを持ち込んでいるということになる。以前、モデルの首から上を全部カットした写真だけで構成された『裏切り』(2004)という写真集を発表したことがあるが、「人妻エロス」は彼にとって、さまざまな過激な実験を試みるラボラトリーとしての役目も果たしつつあるようだ。これからもその派生形が次々に登場してくるのではないだろうか。
それにしても、今さらではあるが、なぜこれらの人妻たちは荒木のカメラの前に裸身を曝したいと思ったのだろうか。そこには単純な欲望や好奇心を超えた、不気味なほどに理解不能な衝動が渦巻いているような気がする。怖いもの見たさではあるが、その正体を確かめてみたい。なお、展示された写真から140点あまりを選んで収録した同名の写真集が、RAT HALL GALLERYから刊行されている。

2013/12/07(土)(飯沢耕太郎)

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