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artscapeレビュー

アイチのチカラ!

2014年01月15日号

会期:2013/11/29~2014/02/02

愛知県美術館[愛知県]

戦後の愛知県おける美術史を振り返った展覧会。同館のコレクションから130点あまりが展示された。戸谷成雄や奈良美智、杉戸洋、安藤正子といった愛知県にゆかりのある美術家の作品をはじめ、片岡球子や中村正義の破天荒な日本画、舞妓を丹念に描いた鬼頭鍋三郎の油彩画など、見るべき作品は多い。
都市の美術史を編纂する重要な契機となるのは、公募団体と美術大学、そして美術館である。こうした諸制度は、美術家や鑑賞者、学生が集まる美術の現場になりうるからだ。事実、本展も1946年の中部日本美術協会の結成にはじまり、1955年の愛知県文化会館美術館の開館、そして1966年の愛知県立芸術大学開学などを歴史の動因としていた。
だが、本展には決して見過ごすことのできない重大な欠陥が2つあった。それは、展示された作品が「絵画」に偏重していることと、歴史を構築する美術館としての態度である。
本展のラインナップは、油彩画や日本画を含む絵画が大半で、立体や彫刻はきわめて少ない。ましてやパフォーマンスや映像は皆無だった。けれども、愛知には同地で結成され、その後全国的に活動を展開したゼロ次元をはじめ、1970年の「ゴミ裁判」や1973年の名古屋市長選挙に立候補した岩田信一など、重要な美術家がたくさんいる。言うまでもなく、赤瀬川原平や荒川修作といったネオ・ダダのメンバーも愛知とは関わりが深い。そうした側面をすべて欠落させたまま、あくまでも絵画を中心に提唱された愛知の美術史が著しく偏向していることは指摘しておかなければなるまい。
むろん、こうした偏りは美術館の収集方針に由来している。だが、本展で明らかにされていたそれを確認してみると、「絵画」を重視する明確な収集方針が打ち出されているわけでもないことに驚かされた。同館は、「愛知県としての位置をふまえた特色あるコレクションを形成する作品」を収集するというのだ。このひどくまわりくどい日本語がわかりにくいのは、コレクションを形成する主体が誰なのか明示されていないからだ。だが、これは明らかなトートロジーである。事実として美術館が収集した美術作品が美術史の主流を形成するのだから、このようにコレクションの主体を曖昧にするような言い方は、無責任というより不誠実と言わざるをえない。
今日、美術史が排除と選択の結果であることは誰もが知っている。だが、であればこそ、美術館に求められるのは美術の歴史を構築する明確な意志とフィロソフィー、すなわち「愛智」ではないのか。

2013/12/20(金)(福住廉)

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