2020年07月01日号
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artscapeレビュー

プレイ 渡邊聖子によるメキシコ死児写真

2014年01月15日号

会期:2013/11/28~2014/12/08

AG+GALLERY[神奈川県]

会期が過ぎていたのだが、撤去までそのままにしてあるということで、東横線・日吉駅前のAG+GALLERYに出かけて、「プレイ 渡邊聖子によるメキシコ死児写真」の展覧会を見てきた。
展示を企画したのは、メキシコで撮影された死児の記念写真のフィールドワークを進めている写真研究者の小林杏である。小林は、19世紀から20世紀半ば以降まで、主にメキシコ中央高原のグアナファト州やサカテカス州で撮影されていた死者の記念写真を蒐集・調査している。今回の展示は、そのなかから200枚ほどの写真を、渡邊聖子が自由にインスタレーションして、会場を構成していくというかたちをとっていた。渡邊は彼女のいつもの流儀で、写真の上にガラスを載せたり、テキストやこまごまとしたオブジェと組み合わせたり、写真の横に鏡や造花を置いたりしている。しかも会場の入口近くでは、小林と渡邊の2~3歳の娘たちが、床に自分たちの持ち物を撒き散らしながら遊んでいて、とても展覧会の会場とは思えないような奇妙な状況が生み出されていた。
もともとメキシコでは、子どもや独身者は穢れがないため、亡くなると天使になるという伝承がある。そのため、通夜の席では彼らの遺骸に白い服や、聖人や天使の衣装を着せ、花で飾り、一晩中音楽を奏でて過ごすのだという。今回はこのメキシコの習慣を、渡邊が換骨奪胎して再現するというもくろみだったのだが、それは見事に成功したのではないだろうか。タイトルが示すように、日本語では「遊び(play)」と「祈り(prey)」とは、同じように「プレイ」と表記される。そこでは、死者と遊び戯れながら、祈りつつ悼むという高度なバランス感覚を必要とするパフォーマンスが、きちんと成立していた。これで終わりというのではなく、さらに「死児写真」をテーマにした展覧会や出版の企画を進めてほしい。

2013/12/09(月)(飯沢耕太郎)

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