2020年07月01日号
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artscapeレビュー

日本の新進作家 vol.12 路上から世界を変えていく

2014年01月15日号

会期:2013/12/07~2014/01/26

東京都写真美術館 2F展示室[東京都]

12回目を迎えた「新進作家展」。日本の若手~中堅の写真家たちにとって、この選抜展の存在は大きな意味を持ちつつある。実際に「I and I」で第38回木村伊兵衛写真賞を受賞した前回の出品者の菊池智子のように、この展覧会をひとつのきっかけとして次のステップに進む者も出てきているのは、とてもいいことだと思う。
今回は「世界と向き合う行為を象徴する『路上』という場所」に焦点を合わせることで、大森克巳、糸崎公朗、鍛冶谷直紀、林ナツミ、津田隆志の5人の作品を紹介している。大森は、ピンク色のアメリカン・クラッカー越しに震災後の東京や福島の桜を撮影して「すべては初めて起こる」をまとめた。糸崎は「組み立てフォトモ」や「ツギラマ」といった特異な手法を駆使して街の光景を再構築する。歓楽街の看板、ポスター、チラシなどに徹底してこだわる鍛冶谷、浮遊セルフポートレートで風景の意味を軽やかに変換していく林、「あなたがテントを張れそうだと思う場所」に実際に宿泊してその場所を記録した津田の仕事も、それぞれの切り口で2010年代の「路上」のあり方を開示していた。
だが全体的に見て、今回は展覧会としてはあまり成功していなかったのではないだろうか。5人の写真家の方向性がバラバラなのは仕方がないが、それらが絡み合うことで、何か新たな「路上」へのアプローチが育っていくようには見えなかったのだ。会場のプラニングも、各作家の特性がうまく活かされているようには見えなかった。津田のパートは、もっとゆったりとしたスペースで見せてほしかったし、糸崎の展示は盛りだくさんすぎた。この種の展示では、バランスをとりながら、はみ出していく部分も大事にするという、難しい舵取りが必要になってくるということだろう。

2013/12/12(木)(飯沢耕太郎)

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