2020年07月01日号
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artscapeレビュー

森山大道「モノクローム」

2014年01月15日号

会期:2013/11/23~2014/12/27

武蔵野市立吉祥寺美術館[東京都]

森山大道はこのところずっと、デジタルカメラで街をスナップした写真を新作として発表し続けている。だが、カラー写真の「ペラペラとした」色味を追い求めていると、時折フラストレーションに襲われるようだ。個人的な作業を写真集として継続的に発表している『記録』(AKIO NAGASAWA PUBLISHING)でも、no.23はロンドンのカラー・スナップだったが、南仏やパリを撮影したno.24ではざらついた粒子を強調したモノクローム写真に回帰していた。2008~12年の作品を集成して月曜社から刊行した写真集も、一冊は『カラー』、もう一冊は『モノクローム』というタイトルである。つまり森山のなかには、カラーとモノクロームの両方に引き裂かれていく心性が共存しているのではないだろうか。
今回、武蔵野市吉祥寺美術館で開催された「モノクローム」展は、その写真集『モノクローム』からピックアップされた写真群と、「狩人」「光と影」「サン・ルゥへの旅」など1960~90年代の旧作を混在させた展示だった。それら59点のモノクローム作品を見ると、白と黒のコントラストに還元されたイメージに対する、森山の強いこだわりがはっきりと見えてくる。
では森山にとって、「モノクローム」とは何なのだろうか。それはカラー写真の表層的で、具体的な現実世界の見え方に対する、強烈な異議申し立てではないかと思える。むろんモノクロームでもカラーでも、目の前の現実に潜む微かなズレを鋭敏に感受する能力と、画面構成における正確無比なグラフィック的な処理能力に違いはない。だが、カラーよりはモノクロームの方が、被写体をより「エタイの知れない異界の破片」として再構築しやすいのではないだろうか。思えば、彼は写真家としてスタートした頃から、撮影を通じて、現実のなかに埋め込まれた異界、彼の言う「もう一つの国」を探求し続けてきた。その営みにおいて、やはりモノクローム写真が最強かつ不可欠の武器であることが、今回の展覧会でも明確に証明されていたと思う。

2013/12/19(木)(飯沢耕太郎)

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