2020年07月01日号
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artscapeレビュー

植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグ 写真で遊ぶ

2014年01月15日号

会期:2013/11/23~2014/01/26

東京都写真美術館 3F展示室[東京都]

植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグといえば、世代的には1894年生まれのラルティーグの方が20歳ほど上だが、どこか似通ったところがありそうに感じる。何よりも、彼らの写真を見る時に伝わってくる手放しの幸福感、被写体に対する肯定的な眼差しが共通性しているのではないだろうか。とはいえ今回のように、それぞれ85点の作品を「1実験精神」「2インティメイト:親しい人たち」「3インスタント:瞬間」「自然と空間」の4部構成で、互いに比較するように並べた展示を見ると、共通性だけではなくその違いもまた目についてくる。
植田はずっと自分は「地方の一アマチュア写真家」であると言い続けてきた。単なる謙遜というだけではなく、そこには自由に、好きなように写真を撮って発表することができるという、アマチュアならではの特権を、誇り高く主張するという側面があったのではないのだろうか。植田にとって最大の目標は、言うまでもなく「写真する」ことであった。その生涯を、ありとあらゆるテクニックと持ち前の実験精神を総動員して、優れた写真を残すことに捧げたと言ってもよい。
一方、フランスのブルジョワ家庭で何ひとつ不自由なく育ったラルティーグにとって、写真は人生を心ゆくまで愉しみ、享受するためのスパイス以上のものではなかったのではないか。彼の写真には、むしろ「余技」であることの純粋な歓びが表われ出ている。見る者を感動させるような一瞬が、見事な構図で切り取られていたとしても、それはあくまでも結果であり、彼がそれを求めていたわけではなかっただろう。
だが、この二人の写真がブレンドされた相乗効果により、それぞれの仕事がそれまでとは違った角度から見えてくることも確かだ。二人ともごく身近な出来事や人物を被写体にしていても、それらがまるで魔法をかけられたような輝きを発していることを確認することができた。

2013/12/12(木)(飯沢耕太郎)

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