2020年07月01日号
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artscapeレビュー

笹岡啓子「Difference 3.11」

2014年01月15日号

会期:2013/12/01~2014/12/20

photographers’ gallery/ KULA PHOTO GALLERY[東京都]

笹岡啓子は東日本大震災のひと月後から東北各地を撮影し始め、1年後の2012年3月から「Difference 3.11」と題する展覧会と『Remembrance』というタイトルの小冊子として発表し続けてきた。その『Remembrance』が、全41冊で完結するのを受けて、photographers’ galleryとKULA PHOTO GALLERYで開催されたのが,今回の展覧会である。
『Remembrance1 大槌』から今回の『Remembrance41 楢葉』まで、1セットで販売されていた小冊子の束の厚さを測ったら6センチほどになっていた。B2判の用紙の裏表に印刷して折り畳んだ小冊子でも、40冊以上になるとそれだけの厚みになる。まずは、三陸や福島県の各地を丹念に歩き回って撮影し続けた写真家としての一途さに感動を覚える。もうひとつ、特筆すべきなのは、笹岡の風景に対峙するポジションの取り方の揺るぎのなさである。どうしても特定の意味がまつわりついてしまう被災地の風景を、笹岡は平静に、やや遠目の距離感を保ちながら、精確なポジショニングで押えていく。そこには明らかに彼女の画面構成の美意識が働いている。
たとえば、今回展示された福島県双葉郡浪江町の除染作業の写真では、白い防護服を着用した作業員たちが、ほぼ一定の、絶妙な間隔で並んでいる様子が撮影されていた。彼らの姿を小さく取り込むことで(それは笹岡の別のシリーズ、釣り人の姿を画面に配した「FISHING」でも同じなのだが)、彼女の風景写真は緊張感を保ちつつ、高度に完成されていくのだ。このような美意識を持ち込むことは、ドキュメンタリーとしての力を弱めているのだろうか。僕はそう思わない。写真の美学と記録者としての節度を、微妙なバランスを保ちながら共存させる道を、笹岡は「Difference 3.11」の展示を通じて模索し続けてきたのだ。

2013/12/08(日)(飯沢耕太郎)

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