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2015年01月15日号のレビュー/プレビュー

水戸芸術館

[茨城県水戸市]

水戸芸術館(磯崎新/磯崎新アトリエ、1990)へ。中庭では多くの出店が並び、屋内ではパイプオルガンのコンサートをちょうどやっており、これだけ空間が活用され、賑わっているタイミングで訪れたのは、初めてだった。「3.11以後の建築」展の巡回に関する打ち合わせを行う。2015年11月からスタートする予定だが、もともと巡回を想定していなかった企画だけに、金沢21世紀美術館とはだいぶ見せ方が変わりそうだ。再構成のイメージを固めるために、展示室をまわる。映像やインスタレーションによるヂョン・ヨンドゥ展を開催中であり、仮設壁や黒塗りなどで空間を厳密にコントロールし、部屋が普段とはかなり異なる印象になっていた。


「ヂョン・ヨンドゥ 地上の道のように」展示風景


「ヂョン・ヨンドゥ 地上の道のように」
会場:2014/11/8~2015/2/1

2014/12/20(土)(五十嵐太郎)

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原田恵×森綾花「12月のゆうげ」

会期:2014/12/17~2014/12/21

iTohen[大阪府]

原田恵は木版画で、お菓子や食べ物といったモチーフだけをシンプルに、そしてカラフルに描く。森綾花は木炭で、とある食卓のあるシーンをモノクロームで描く。テーブルやお皿の上の物語だ。色やモチーフ、作風が対照的な2人だが、作品同士の関係性がまた別の物語を生むという相乗効果があって楽しめるようになっていた。イラストレーションの2人展としては、とても親しみやすい構成。


展示風景

2014/12/20(土)(松永大地)

注目作家紹介プログラム チャンネル5 木藤純子|Winter Bloom

会期:2014/12/06~2014/12/21

兵庫県立美術館[兵庫県]

上空から花びらが落ちてくる静かなインスタレーション《winter bloom》作品を中心に、館内のさまざまな場所に作品を点在させている。作品の前が行列状態となるほどの盛況だった特別展「だまし絵展II」を観覧した後でも発見できるほどに、館内数カ所に桜色の季節外れな花びらが散乱していて、こちらの小企画への導入としては最適。
また、美術館の外で見られる上空6mほどに舞うという1枚の花びら《flower bird》は、外壁のコンクリートの巨大な塊と青空をバックに、とても詩的で、か弱さの象徴として揺れながら力強さを讃える様は見事だった。


写真では見えないが、手前の屋根の建物よりの辺りに花びらが1枚浮かんでいる

2014/12/20(土)(松永大地)

阪神・淡路大震災から20年

会期:2014/12/06~2014/12/21

兵庫県立美術館[兵庫県]

兵庫県立美術館の常設展示室のテーマ展が「阪神・淡路大震災から20年」。展示の第3部では、明石市出身の米田知子による、震災後10年目に芦屋市で制作、発表された作品写真のシリーズが展示されていた。これは国立国際美術館所蔵作品で、被害が大きかった地域や遺体安置所として使われた場所を、静まり返った場所のように写している。別室第1部、第2部で文化財レスキュー、震災後の所蔵品の修復など軽いものが続いた後に予想外に表れた静寂の世界より、目に見えないものが強烈に心を掴む。

2014/12/20(土)(松永大地)

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ロイヤル・アカデミー展

会期:2014/06/01~2015/01/25

静岡市美術館[静岡県]

東京富士美術館でもやってたが、静岡に巡回するのを待って、大阪に行くついでに途中下車。なにしろ静岡駅から徒歩3分なので、八王子からバスに揺られて行くより便利かも。なわけで静岡市美術館に初訪問。ビルのなかの美術館だからギャラリーに毛が生えた程度だと思ってたら、あにはからんや天井高は4メートル以上あり、広さも展示室だけで1000平米を超す。県立美術館はもっと広々してるけど、ついでに寄るには遠いからな。でもなんでわざわざ途中下車してまで「ロイヤル・アカデミー展」を見に行ったかといえば、ちょうど30年前、初めてロンドンに行ったとき、初めて見た展覧会がロイヤル・アカデミーでやってた「17世紀オランダ風俗画展」で、そのとき初めてフェルメールのすごさとオランダ絵画の豊穣さを認識したからだ。以来ぼくのなかでロイヤル・アカデミーは、古めかしい建物ともどもクラシックな絵画の記憶と結びついているのだ。同展は、1768年のアカデミー創設から20世紀初頭までの150年間に活躍したレノルズ、ゲインズバラ、カンスタブル、ミレイ、サージェントらイギリス人画家の作品62点に、美術教育の資料を加えたもの。さすがアカデミーなだけにどの絵も古くさい。いまから見て古くさいだけでなく、おそらくそれぞれの時代においても古くさく感じられたのではないかと思えるほど古くさい。印象派の時代においていまだ古典主義だし、20世紀に入ってようやく印象派の影響が見られるくらいだから。ま、フランスだってアカデミーの画家は似たようなもんだったろうけど。カンスタブルは小さな習作はすばらしいのに、《水門を通る舟》みたいな油彩の大作になると安っぽい売り絵に見えてしまう。それはたぶん安っぽい風景画家がカンスタブルを手本にしたので、カンスタブルまで陳腐に見えてしまうのかも。チラシにも使われたミレイの《ベラスケスの想い出》は、ベラスケス特有のラフなタッチで衣服を描いてるのに、顔だけはていねいに描写している。そのため顔と衣服がチグハグで、観光地によくある顔の部分だけ丸く切り抜いた「顔出し看板」みたい。しかしもっとも印象深かったのは、チャールズ・ウェスト・コウプの《1875年度のロイヤル・アカデミー展出品審査会》。アカデミーの一室で重鎮たちが絵を審査している情景を描いたもので、突っ込みどころ満載なのだが、ひとつだけいうと、この審査風景っておよそ1世紀半も前のことなのに、いまの日展とほとんど変わらないんじゃないの?

2014/12/20(土)(村田真)

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