artscapeレビュー

2013年01月15日号のレビュー/プレビュー

門田訓和 before that

会期:2012/12/08~2012/12/24

ARTZONE[京都府]

32色の折り紙を、決まった折り方、並べ方で多重露光した写真作品《coloe paper》を中心に、同様の手法で制作したモノクロの作品や映像作品を出品。透過性のある色面が幾重にも折り重なった画面は純粋に美しく、同時に行為と時間の積層が目に見える形で刻印されている。この軽やかさ、透明感を他の方法で表現するのは難しいだろう。昨年春に大学院を修了したばかりの若手とは思えない、完成度の高い個展だった。

2012/12/08(土)(小吹隆文)

土木デザイン競技 景観開花。9 公開最終審査会&トークセッション

会期:2012/12/08

東北大学青葉山キャンパス[宮城県]

日本国内唯一の土木系アイデアコンペ、景観開花の審査を今年もつとめた。テーマは「未来へつなぐ防潮堤デザイン」である。石巻にジグザグの防潮堤をつくる予選トップ通過の社会人の案は伸び悩み、佳作どまり。逆に予選ぎりぎりで通過した案「わたしのまちの堤防の家」(塩田一弥、江川拓未、根本周)のプレゼンテーションがよく、逆転で最優秀になる波乱含みだった。雄勝の漁村の集落に、海が見えなくなる大きな防潮堤をつくる代わりに、小さなL字の厚いコンクリートの壁を数多く分散させ、それを利用して家や各施設などをつくるというもの。このコンペ9年目にして、東北大の建築チームが初の1位に輝いた。

2012/12/08(土)(五十嵐太郎)

虹の彼方──こことどこかをつなぐ、アーティストたちとの遊飛行

会期:2012/11/23~2013/02/24

府中市美術館[東京都]

今日は多磨霊園に墓参り。地図を見ると府中市美はすぐ近くなので寄ってみる。今回は芸術と日常の接点を探る企画展のようだ。出品作家は伊庭靖子、小木曽瑞枝、斎藤ちさと、塩見允枝子ら9人で、印象に残ったのは三田村光土里とmamoruの作品。三田村は、展示室にカメラ、タイプライター、レコード、フィギュア、本、地図、はかり、椅子、格言のような言葉などの日常品を持ち込み、そこに毛糸を絡めている。毛糸の端には「ART」「AND」「BREAKFAST」と描かれたジグソーパズルのピースがぶら下がり、もう一方の端にはカギが吊るされている。これはここ数年、三田村が世界各地で展開して来た「アート&ブレックファスト」というプロジェクトで、観客とともに朝食をとりながら語り合い、少しずつインスタレーションを築き上げていくというもの。この一部屋にさまざまな文化が共存し、糸で結ばれているわけだ。一方mamoruはインタラクティブなサウンドインスタレーション、訳せば双方向的な音の装置。ひとつは、テーブルの上に透明のガラス瓶を20個ほど置き、天井から釣り糸を垂らしている。観客がかたわらに置かれた冷蔵庫から氷を取り出して釣り糸に掛け、しばらく待つと氷が溶けて水滴がガラス瓶のなかに落ちていく仕組み。その音を静かに聞くという作品なのだ。もうひとつは、テーブルの上に大きさの異なる空のペットボトルを数十本並べ、その横に扇風機を置いている。観客がスイッチを入れると扇風機の風がペットボトルの口をなで、わずかな音をたてる。その上のほうには数十本のアルミのハンガーが掛けられ、そこにも扇風機の風があたり、シャララとわずかに音をたてる。なんと繊細な。

2012/12/09(日)(村田真)

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せんだいスクール・オブ・デザイン 2012年度秋学期 PBLスタジオ1メディア軸 フィールドワーク「スローウォーク」

会期:2012/12/09

仙台市内[宮城県]

せんだいスクール・オブ・デザインのメディア軸スタジオのメンバーで、スローウォークを実践した。これは受講生のひとり、篠原さんが普段からやっているものだが、仙台駅から国分町まで四時間!かけて歩く試みである。いや、超低速で、止まっているかのように歩くというべきか。この日は雪が降っていたが、アーケードで行ない、時速300mくらいだった。確かに世界の見え方が変わる。アーケードでは、消費者が絶えず流れる川のように歩き続ける。そして立ち止まって、歩行者に声をかける売り子たち。だが、そのどちらでもないスローウォーク。ポケットウィスキーを片手に実践者は、微動する石のような存在となり、目をつぶっていても人がぶつからない。あまりの遅さゆえに、すべての看板、広告、細部を確認できる絶対的な速度である。スローウォークを運動として考えると、シチュアシオニストの漂流などにも通じる、批判的な都市への介入としても興味深い。

2012/12/09(日)(五十嵐太郎)

ケルン

[ドイツ、ケルン]

およそ20年ぶりに、ケルンの街を歩く。ゴシックの大聖堂は都市につきものだが、ロマネスクはしばしば田舎に存在しているから、都市でこれだけ多くのロマネスクの教会を見ることができるのは珍しい。実際、ホテルの窓からも大聖堂とロマネスク教会群の塔が目立つ。中世に栄えたケルンらしいスカイラインだ。クリスマスという季節柄、簡易建築の出店によるマーケットが街のあちこちに出現し、これも観光の対象になっているらしい。とくにノイマルクトは小さな家型の屋根が並び、かわいらしい。

写真:上=ホテル窓から見える大聖堂とロマネスクの教会、下=ノイマルクト

2012/12/11(火)(五十嵐太郎)

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