artscapeレビュー
2014年01月15日号のレビュー/プレビュー
セント・ポール大聖堂、ザ・シャード
[イギリス・ロンドン]
ユーロスターでロンドンへ。イタリア→フランス→イギリスと離れるにつれ、古典主義のプロポーション感覚は少しずつ崩れていくのだが(震源地を正統とした場合。だから、日本やオーストラリアだとさらに変形)、クリストファー・レンのセント・ポールは本格的である。同時代に一目置かれていたことも、うなづけよう。2年前に訪れたときは建設中だったレンゾ・ピアノの超高層ビル、シャードが完成していた。ロンドンとしては圧倒的な高さなので、遠くからも尖った三角形のシルエットがよく映える。この感じは、平壌で見た柳京ホテルを思い出す。高層ビルが多いなかのひとつではなく、ひとつだけ抜きん出ているからだ。とはいえ、全体的にハイテク系建築は、ロンドンの古い街並みとなじんでいると思う(チャールズ皇太子はかつて非難したけど)。久しぶりにマイケル・ホプキンスのブラッケンハウスの前などを通りつつ、あちこちにスケールを小刻みに分節したガラスの現代建築が増えていることを改めて感じた。
写真:上から、《セント・ポール大聖堂》、レンゾ・ピアノ《ザ・シャード》、マイケル・ホプキンス《ブラッケンハウス》
2013/12/29(日)(五十嵐太郎)
テート・モダン
[イギリス・ロンドン]
テート・モダンへ。ヘルツォーク&ド・ムーロンによる増築工事もだいぶ進んでいた(論議があって、当初のデザインは変更されている)。それにしても、単体で現代建築が登場するのではなく、フォスターによるミレニアムブリッジによって、対岸のセントポールとつなぎ、都市計画、土木が連動できるのはうらやましい。常設は、テーマ別の展示で知られるが、前室のモネからリヒターによるケージ連作の部屋、あるいはターナーの絵からロスコのシーグラム壁画の部屋といった作品のシークエンスは鮮やかである。日本人の現代美術では、もの派(アルテ・ポーヴェラの部屋で)のほか、実験工房と、石内都の部屋を確認することができた。企画展のミラ・シェンデルが素晴らしい。抽象絵画をちょっとやわらかく、かわいくした感じで出発した後、文字を活用した作品、紙や半透明の素材を使う空間のインスタレーションなどを展開している。同じブラジルだと、リジア・クラークや建築のリナ・ボバルディらも、女性作家の幾何学表現に面白い人がいる。テートモダンでは、もうひとつクレーの企画展が開催されていた。1年、あるいは2年ごとに部屋を分け(全部で17部屋)、バウハウス、旅行、ナチスの台頭などの背景を受け、刻々と作風を変え、表現を実験していく作品の軌跡をたどる。訪れたときは巨大な吹抜けであるタービンホールでの展示はなかったが、ここでの巨大なインスタレーションを一度体験したい。
2013/12/29(日)(五十嵐太郎)
大英博物館 グレート・コート
[イギリス・ロンドン]
大英博物館へ。やはり、ノーマン・フォスターが手がけた、グレートコートの空間は素晴らしい。内部に入った瞬間、全方位的に直感で訴える。頭上で現代建築と古典建築が無理なく、ガラスの大屋根で接続され、目の前には開放的な広場が立ち現われる。おそらく専門的な知識がなくとも、一般の人にとっても強い印象を残す建築だ。グレートコートは、ルーヴル美術館におけるガラスのピラミッドと同様、中庭からそれぞれの展示エリアへの動線の処理にも役立つ。
2013/12/30(月)(五十嵐太郎)
Serpentine Sackler Gallery
[イギリス・ロンドン]
ハイドパークに出向き、ザハ・ハディドによるサーペンタインのsackler galleryを見学した。ロンドン滞在中は開かないので、内部に入れないのを承知で訪れたが、外観を見る限り、正直、あまりいい建築のようには思えなかった。強い形はあるが、空間がないというか。ザハの作品は、当たり外れの振幅が大きいという印象は変わらなかった。
2013/12/30(月)(五十嵐太郎)
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館
[イギリス・ロンドン]
ヴィクトリア&アルバート美術館に立ち寄る。ここは以前、藤森照信さんの茶室も展示したように、建築セクションがあり、常設で建築の展示室をもうけている。テーマごとの展示、建築家のドローイングや思考、構造や技術の解説、そして大英帝国が支配した海外におけるイギリス人建築家の作品などが紹介されていた。
2013/12/30(月)(五十嵐太郎)