artscapeレビュー

2014年01月15日号のレビュー/プレビュー

なべよこ ni アート

会期:2013/12/26~2013/12/28

鍋横大通商店会[東京都]

都内の空き物件を見つけて作品を展示してしまうヤドカリトーキョー、第12弾。中野区の鍋横商店街の約30軒の店先に20作家が作品を設置していた。が、朝近くで用事をすませて午前10時に着いたため、多くの店は開いておらず見ることができなかった。開いていたとしても飲食店はなにか注文しなければならず、敷居が高い。これはまあ仕方のないことで、全部見ようなんて思わないことだ。それでもみずほ銀行を縛った松本春崇の「家縛り」(の痕跡)や、呉服屋にぴったりの色柄の抽象画を飾った門田光雅など何点かは見ることができた。年末の商店街という過酷な環境のなかでいかに目立つか、アーティストは真剣に考えなければならない。

2013/12/27(金)(村田真)

ルーヴル・ランス

[フランス・パリ]

ルーヴル・ランスへ。SANAAの手法が随所に散りばめられているが、かつて炭鉱で栄えた町ゆえのボタ山が遠くに見えるまわりの環境との関係性、特に外構のランドスケープが美しい。ガラスとアルミに映り込む風景や常設展示室における壁の鏡面効果は、きわめて映像的であり、新しい空間が出現していた。壁と床の緩やかなカーブは空間に微妙なねじれをもたらす。ルーヴル・ランスの常設部屋は、時系列の年表バーを横の壁に提示しつつ、群島状の配置パターンで、数千年前から19世紀までの彫刻や絵画を展示している。こうして一覧すると、絵画より彫刻の方が先に進化した(写実性を基準とした場合)、あるいは長期的に残せると改めて思う(特に石の彫刻)。企画展では、チェルヴェテリに焦点をあて、エトルリアの文化を紹介する。墓が集積したネクロポリスが興味深い。ただし、ここは仮設壁が大量にできるため、どうしてもSANAAの繊細なデザインは消えてしまう。ヌーヴェルのケ・ブランリも、企画展エリアは常設と対照的に表現を抑えている。
美術館にてランスのアール・デコという本を購入したが、炭鉱で栄えていた頃、古典主義を崩したアール・デコが流行ったようで、実際に街歩きも楽しめる。特に駅舎がかわいらしいアール・デコだった。もっとも、駅には戦争の記憶を示すプレートと、ここから528人のユダヤ人がアウシュビッツに送られた記録を示すプレートもかけられている。

2013/12/27(金)(五十嵐太郎)

iTohen開設10周年記念 作品展

会期:2013/12/11~2013/12/28

iTohen[大阪府]

黒瀬正剛、間芝勇輔、きくちちき、asaruほか110名による計110点の平面を中心にした作品が壁いっぱい展示されるなか、権田直博の作品に目を奪われる。自分の父親の肖像(西郷隆盛をベースにした似顔絵!)をクリスタルの中にレーザーで3Dに彫った、キッチュなお土産品同様に仕上げた七色に光る10センチ程度の物体。イラストレーション作品が多いなか、この違和感で思い出した。そうだ、彼の作品は、これまでもにぎり寿司が空を飛ぶような絵だったりする作品だけでなく、お風呂に入りながら鑑賞できたり、宙に浮かせた畳に座らせたり、ギャラリーでヤギ焼き肉したり、いつもノイズを潜ませてくるんだった。

2013/12/28(土)(松永大地)

エルジェ美術館

[ベルギー]

パリからベルギーへ日帰りを行なう。2009年にオープンした『タンタンの冒険』を描いた漫画家のエルジェ美術館を訪れる。4つのユニークなヴォリュームをブリッジで渡りながら、展示を鑑賞する空間だった。クリスチャン・ド・ポルザンパルクの設計だが、ルーヴル・ランスを見た直後だと、彫刻的な形態の組み合わせを競ったポストモダン的な時代の懐かしさを感じる。1929年にスタートした『タンタンの冒険』の展示をいまの視点から鑑賞すると、世界各地を旅していることから、アジアを含む非西洋圏に対するイメージなどがうかがえて興味深い。バンドデシネの分野において緻密な建築描写で知られるスクイテンを輩出した国、ベルギーはブリッセルに漫画博物館や漫画を描いたまちなか壁画プロジェクトもあって、漫画の紹介に力を入れている。

2013/12/28(土)(五十嵐太郎)

横尾忠則「肖像図鑑/HUMAN ICONS」

会期:2013/09/28~2014/01/05

横尾忠則現代美術館[兵庫県]

昨年、開館1周年を迎えた横尾忠則現代美術館で、同氏のポートレイト作品に特化した展覧会が行なわれた。その肖像画の対象は、俳優、ミュージシャン、芸術家、家族、作家たちと幅広く、表現媒体も、絵画、イラスト、デザイン原画、ポスター、版画と多種多様。1960年代から70年代にかけてグラフィック・デザイナーとして活躍していた横尾は、仕事を通じて多くの著名人たちと知己を得た。高倉健や浅丘ルリ子ら映画スターたちを写したイメージは、彼の創造力や思い入れと時代の香りとが相まって、異彩を放っている。また近年における、明治時代以降の文壇の作家たちを一堂に描いたシリーズ192点は圧巻である。とりわけ今回、デザイナー時代の本領が発揮された作品群が、三宅一生とコラボレーションした仕事。横尾は1977年から99年までイッセイ・ミヤケのパリ・コレの招待状のデザインを手掛けた。一連の三宅のポートレイトは、油絵作品と異なる、遊び心、軽やかさ、即興的な感覚が直接的に観る者に伝わる。デザイナーとしての横尾のセンスに唸らされた。[竹内有子]

2013/12/29(日)(SYNK)

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