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2014年01月15日号のレビュー/プレビュー

オリンピック・パーク

[イギリス・ロンドン]

ロンドンの北東、オリンピック・パークへ。ザハ・ハディドによるアクアティクス・センターや、アニッシュ・カプーアの巨大彫刻の塔などが残るのだが、近くにアクセスできず、遠くから眺めるだけだった。現在は廃墟感の漂う雰囲気で、大阪万博が終わった後もこんな感じだったのではないかと、つい想像してしまう。ただし、現在はオリンピック・パークを整備中で、2014年にきちんと再開するようだ。

2013/12/31(火)(五十嵐太郎)

ウェストフィールド・ストラットフォードシティ

[イギリス・ロンドン]

オリンピック・パークの隣、駅に直結するのが、ウエストフィールド・ストラトフォード・シティという新しい巨大なショッピングモールである。屋根を架けない、屋外のストリートのエリアも演出するのが特徴のようだ。ヨーロッパではかなり大きいものらしいが、ドバイのテーマ型モールをいろいろ見たことがあるので、それに比べると小さい。

2013/12/31(火)(五十嵐太郎)

ナショナル・ギャラリー セインズベリー棟

[イギリス・ロンドン]

ナショナル・ギャラリーへ。ロバート・ヴェンチューリが手がけたセインズベリ・ウィングから入る。ハイテクのフォスターによるガラスの増築とは違い、もとの建物の古典主義を偽装しつつ、マニエリスム的に延長したデザインだ。有名な西洋絵画がそろっているが、学部の頃、高階秀爾、若桑みどり、大高保二郎の各先生による美術史の講義を聴講したことを思い出すラインナップだ。筆者は建築学科だったが、あのとき西洋美術をどう見るかを最初に学んだ。

2013/12/31(火)(五十嵐太郎)

We Will Rock You

ドミニオン劇場[イギリス・ロンドン]

大晦日はドミニオン劇場にて、クイーンのロック・ミュージカル「We Will Rock You」を鑑賞。20曲以上をライブで聴けるのが嬉しい。原曲と異なる印象のアレンジも思った以上になく、特にブライアン・メイのギターのフレーズが、曲のアイデンティティを形成するうえで、重要なことが改めてよくわかった。ただし、物語はつまらない。ロック・ミュージカルは、(未来の)管理社会とそれを打破する自由と愛のロックというストーリーばかりだ。「Rock of Ages」も然り、ドラマ仕立てのStyxの「Kilroy Was Here」も、そうである。かつてはそういう意義もあったと思うが、本当にいまのロックにこれを期待してよいのか。以前、大槻ケンヂが、ロックには、こんな社会は嫌だと、僕は君が好きだの二種類の歌詞しかないと見事に指摘していたが、確かにロックのヒット曲を無理につなげてストーリーをつくると、こうなりがちなのもわからなくもない。ただ、クイーンの楽曲なら、もうちょっと物語のバラエティが出せるのではないだろうか。

2013/12/31(火)(五十嵐太郎)

荒木経惟『死小説』

発行日:2013年10月31日

文芸雑誌『新潮』2012年2月号から13年8月号隔月20ページずつ連載されていた荒木経惟の「死小説」が、A5判変型の写真集としてまとめられた。209枚の写真が何のテキストもなくただ並んでいるだけ。それを「小説」と言い張るところがいかにも荒木らしい。
内容的には、これまで荒木が編み続けてきた「日録」的な構成の写真集と同工異曲のものだ。日々の出来事を撮影した写真の合間に、「Kaori」や「人妻エロス」や「バルコニー」などのお馴染みのシリーズが挿入され、新聞やポスターなどの複写が添えられる。前立腺癌の手術など、荒木自身の体調があまりよくなかったことが影響しているのだろうか。カダフィ、三笠宮寛仁、大鵬、サッチャーの訃報記事のような、“死”のイメージが大きく迫り出してきているように思える。それに加えて、連載中は東日本大震災とその後の福島第一原発の大事故の余波が重苦しくのしかかる時期だったことも見逃すわけにはいかないだろう。
このような荒木の写真集を、何冊となく見続けてきたわけだが、それでもなおページを繰るたびに、あらためてその中に引き込まれ、驚きと感嘆を押えられなくなる。おそらく彼自身、あらかじめ物語をこのように進めていこうというような予測や思惑を持って、写真を撮影したり選んだりしているわけではないはずだ。にもかかわらず、ラストの亡き父親の遺影や『往生要集』の地獄絵図などのパートまで、あたかも神の手に導かれるように、よどみなくイメージの流れが続いていく。そこから見えてくるのは、まぎれもなく荒木が「死を生きる」ことを写真家の日常として選びとっているということだ。そのことの凄みを、何度でも味わい尽くすべきだろう。

2013/12/31(火)(飯沢耕太郎)

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